先の第59回ベルリン映画祭で「カリガリ賞」「国際批評家連盟賞」を受賞し、映画「自殺サークル」「夢の中へ」などで知られる奇才、園子温 監督の新たな一面がうかがえる、2006年に収録したロング・インタビュー。
園子温(以下S)「最近、気分が優れないよ。大変すぎて。」
●「(笑)あー、お仕事がお忙しいんですか?」
S「一本の編集が終わってないのと、次回作の台本が仕上がってないから、その二つ。二つが重なってると実に気分が良くないね。」
●「次回作は、自殺(サークル2)ですか?」
S「いや、それは撮り終わって。これからは、ひと月に一本ずつ撮っていこうと思って。」
●「え?!」
S「可能な限り、(期間を)狭めようと思って。今、十二月に撮ったやつの仕上げやってて、で、二月に一本撮って、三月に一本撮って。三月・・・それは結構やばいかな、四月にしようかな、それで四月の後、五月か六月に・・・そういうふうに、まあひと月に一本は難しくても、ふた月に一本とか。」
●「それって、相当早いペースですよね?」
S「うん。」
●「じゃあ、次撮りたいものとかアイディアは浮かんでるんですか?」
S「んー、その中には雇われものもあるし、とにかく今年のテーマだから。いっぱい撮るっていうのが。」
●「なるほど。話は変わりますが、小さい頃はどんなお子さんでしたか?」
S「小学生?小学生ねえ、ろくなもんじゃないよね。」
●「(笑)どんなふうに、ろくなもんじゃなかったんですか?」
S「まあ、一から十までろくでもなかったんじゃないですか。入学式にまず遅刻してくるし・・・、まあそんな感じよ。初日からヤバいと思ったらしいから、みんな。それで、『起立、礼』ってあるじゃん。あれ、やらなくて、先生に『なぜやらないの?』って聞かれて、『なんでやらなきゃいけないの?』って言って。『理解できないから、やれません。』って言って。ま、そっから始まって・・・」
●「それが、小学校一年ってことですよね?」
S「うん、そう。とにかく、意地っ張りだった。そのヒステリーが講じて、全裸で学校に行ったりとかしてたらしいね。」
●「その記憶は、ご自身はないんですか?」
S「なんとなく、あるよ。」
●「それは、何歳くらいの時に行ったんですか?」
S「小学校・・・二年生くらいかな。何回か、それででかけたらしい。」
●「もっと前の幼稚園くらいの時に、その芽はなかったんですか?」
S「うん、なかったね。だんだん堅苦しくなっていって、ヒステリー状況じゃないかな。」
●「それは、ご両親の影響とかはあったんですか?」
S「全然、ないね。両親は、堅い人だったから。隔世遺伝したんじゃないかと思うんだけど、僕はおじいさんとかの血で。で、うちの家庭は皆、反面教師だから、おじいさんがすごいアナーキーだと、お父さんはすごいまじめになっちゃって、で、隔世的にすごいそれがいたたまれなくなるわけじゃん?」
●「じゃあ、アナーキー、まじめ、アナーキー、まじめって感じで来てるんですか?」
S「そうそう、だからうちの息子はまじめになるでしょ。」
●「おじさんがドキュメンタリー作家だったり、近しい人にそういう人がいたことによって、何か影響受けたりしたことってあります?」
S「うーん・・・ない!ね。」
●「詩とかパフォーマンスとかに、興味を持ちはじめたのはいつ頃ですか?」
S「パフォーマンスについて、興味を持ったことは一度も無い。詩は、高校生の頃にロックバンド作ってたから。で、授業中暇だったから歌詞を書いてたの。でも、毎日六時間も授業があって、ずっと歌詞書いてると、だんだん研ぎ澄まされてくる。バカじゃない限り。『私は君を愛している リフレイン×三回』とか毎日毎日書けないでしょ。で、『私は君を愛している』を別の比喩を使って書いてみようとか思うわけだよ、ある日から。それをやってたらいつの間にか、現代詩を書くようになったの。」
●「それは、やっていたロックバンドのオリジナル曲として、使おうと思ってたんですか?」
S「んー、だと思うよ。」
●「じゃあ、高校の頃の授業っていうのはほとんど・・・」
S「関係ないね。」
●「高校生の頃は、他にどんなことをしてたんですか?」
S「もう、思い出したくもないから。思い出したくないって思うと、忘れてっちゃうよね。」
●「ああー。」
S「本当に。だから俺、すごく記憶力悪いの。全然記憶がなくて、それは楽しくないっていうか、面白くないからねえ。だから、あんまり思い出せないねえ。」
●「フィルムをまわすようになったのは、何歳くらいですか?」
S「意識的に始めたのは、十八かな?二十歳くらいかな。」
●「じゃあ、大学入って、始めたんですか?」
S「いや、二年くらい、俺、東京ブラブラしてたりしてたから。その後、大学入ったからね。んー、まあその前後だよね。」
●「その二年間ってどんなことをしてたんですか?」
S「寺山修二に会いに行ったりしてたよね。まだ、生きてたから。あとは、んー、何してたかな。ガロに漫画を持ってったりとかしてたな。」
●「じゃあ、何かを作ったりとか、そういうことは続けてたっていうことですか?」
S「そうそう、だから何に進むのか分からなかったね。」
●「でも、クリエイティブな何かをやりたいとは思ってたんですか?」
S「まあ・・・そうだね。」
●「二十二歳っていうのは、ご自身にとってターニングポイントだったんですか?」
S「え?なんで?」
●「監督作品の『自転車吐息』や『俺は園子温だ!』で、主人公が二十二歳っていうことをとても強調していたので・・・」
S「それは、二十二歳は、意識的に映画を始めた歳だからね。いや、でもそれにはこだわってない。」
●「たまたま、設定が二十二歳だった?」
S「うん。」
●「そうですか。それがすごく印象に残ったので・・・。」
S「うーん・・・・・・あんまり思い出せない。」
●「二十二歳の時は、映画を撮ること以外に、どんなことをされていましたか?」
S「でも、(主人公が)二十二歳ってそれ以外ないでしょ?新作の『紀子の部屋』も二十二歳じゃないし。だから、その時は何かあったのかも知れないけど、自分でそういった記憶を潰してっちゃうから。邪魔なんだよ、過去が。だから、現在ものを作るためには、あんまり(過去に)こだわっちゃいけないっていうのがあるんだよね。もし、その当時こだわってたとしても、覚えてない。記憶にない。」
●「それは、さっきおっしゃっていた嫌な記憶だからという意味ですか?」
S「嫌な記憶ということではないんだろうけど、ない。」
●「じゃあ、過去のことについて聞くこと自体ナンセンスですかね。」
S「んー、だから趣味とかもすべて変わっていくし。だから、『自転車吐息』撮ってから、お酒いっさい飲まなくて、コーヒーとチョコレートが好きな人だったんだけど、今はコーヒーもチョコレートも両方とも嫌いだから。そうやって、全部変わっていくし。あと、アンティークとか好きだったけど、今はアンティークほど醜悪なものはないと思ってるから。そんな感じでどんどん忘れてっちゃうよね。」
●「園監督の映画って、沈黙とか環境音しかないようなシーンが多いと思うんですけど・・・」
S「それも、古い映画だよ。今は、饒舌だもん!すっごい饒舌!まだ発表されてないけど、オダギリジョーが出てる『ハザード』っていう映画と『夢の中へ』っていう映画と『紀子の食卓』は、ずっとしゃべりっぱなしだよね。」
●「(笑)」
S「ウッディ・アレンの映画に負けてないくらい話してるよ。とにかく、間がないの。」
●「じゃあ、昔は『沈黙』っていうのに何かしらの意味を込めてたんですかね?」
S「ま、当時はあったんじゃない。それも、忘れた。そんなの、俺には無理だよね。一時期の昔のこだわりについて話すっていうのは。また、一周したら似てくるんじゃない。また、コーヒーと甘党で、沈黙が好きになるかも知れない(笑)」
●「(笑)なるほどね。」
S「引っ越しと同じだね。俺はさあ、だからいろんなとこに住みたいのよ。前に住んでたとこから、西麻布の交差点に引っ越したの。とんでもないちゃらちゃらした感じで。でも、それも僕の中に必要だった。それに似てるかも知れない。だから、あんまり深く興味を持って行かないんじゃないかな。」
次のページ










