
「Popee ザ ぱフォーマー」や「ガラクタ通りのステイン」、「Funny Pets」の作品でアニメーションのフィールドを駆け巡る増田龍治監督。現代人の抱える問題などをブラックな表現を交えアニメーションで表現する増田氏に直撃インタビュー。
Takimoto:小さい頃はどんなお子さんでしたか?
Masuda:小さい頃はマイペースな子だったと思いますね。ワーっと遊ぶ感じではなかったですね。で、母親が大学の寮を経営してたんで、マンガとか小説とかの話とか、部屋に遊びに行くといろんなマニアックな話をしていたので、それを聞きながらマンガや物語を書いていましたね。
T:じゃぁ小学校の頃からストーリーとか考えるのは好きだったんですね。
M:マンガが中心だったんですけどね。その頃は、「銀河鉄道999」とか弓月光の「エリート狂走曲」とか、ジャンプとかとは違う大学生が読んでも面白いやつを教えてもらったというか。スタジオぬえのポスターとかSFのデザイン画とかね。
T:本格的にCGアニメーション監督としてのきっかけは何かあったんですか?
M:美術部とかで絵を描いていたんですけど、高校の時に映像にいくのかイラストレーションの方にいこうか迷ってたんですけど、映像だったら音楽とかセリフも操れるじゃないですか。だからそっちの方が面白いかなって思って。だからそれからですね。

T:その当時ハマっていた音楽とかはありますか?
M:う〜ん、エクソシストのテーマ曲とかプログレ系ですかね。インストとか歌詞がない方がイマジネーションが広がるんで、そういうのをよく聴いていましたね。漫画を描くにしてもコマ割りがヘタだったんですね。描いても映像みたいに細かくなっていくんですね。まるで映像みたいになって、マンガのテンポがよく掴めなかったんですよね。マンガが下手だったというか(笑)
T:よっしゃこの世界で食べていくぞってきっかけになったのはいつ頃ですか?
M:生活を考えだしたたのはポピーが当たったくらいですかね。
T:ポピーの前は何をされていたんですか?
M:アニメーションの会社にいたんですけど、そこで絵本を一冊出したんですよ。実際のアニメーションの制作はやっぱり一本描き上げても、手描きだと3年とか4年とかかかるから、いつ自分の作品が世に出るかわからないんですよね。その時ちょうどCGでジェラシックパークとかが出てきて、コンピューターでアニメーションが作れる時代になってきたんだって認識して、ゲームの世界に入ったんですよ。で、CGを学んだ後にその企画を前のアニメーションの会社に売り込みにいったんですよ。それがポピーですね。普通の手で描くよりCGでやりませんかってのをもう一回提案し直したんですよ。それは自分で学ばないと相手を説得できませんしね。その為にゲーム会社で2年くらい勉強して、企画を練り直していたんです。
T:その時点でコレやっていう感じだったんですか?
M:いえいえ、単純にコレで食べれるって思ってなかったですよ。日本ではCGでやろうって誰も思ってなかったですよ。アニメーションの会社ではCGは冷たい表現だって毛嫌いしていた状態だったんで。でも、そうしている間にトイ・ストーリーとかフルCGアニメーションとして劇場で公開されて、それなりに評価されて。風向きが変わってきて・・・。
これもありなんや〜って(笑)
そうそう(笑)儲かるんだ〜って周りが考え出した時に、ちょっとずつ注目されたんで、ちょうど時代が良かったんですよね。タイミングがバッチリ合ったというか。それがなかったらこの企画は通らなかったかもしれませんね。
T:それがきっかけでポピーができたんですね。僕もキッズステーションでポピーを観て、かなりの衝撃を受けたんですよ。
M:儲けようって思ってやったんじゃなかったから逆に良かったのかもしれませんね。自分がこういうのを作りたいんだっていう事しかなかったですからね。でも、企画書では最初かた毒のあるヤツではハネられるって思ってたんで、2人の芸人ががんばり合う毎日を描きますって書いたんですよ(笑)その企画が通ったから・・・放映されていくとTVって視聴率が良かったら何にも言いませんから(笑)
T:いいですよね。ウラヤマシイです(笑)でも何話か放送禁止になったモノもありましたよね?
M:必ず一回は絶対に放送して、反響をみて、あまりにもヤバイなって声があったやつは放送しないようにしたんです。ビデオとかには入ってますけどね。簡単に言うとこれが僕ですっていう名刺が欲しかったんですよね。本当はポピーを作ったら売れると思ってなかったんで、それを持って別のアニメーション会社に売り込みにいって僕を買ってていうふうな感じでやろうと思ってたんです。
T:今までの流れにないところに喰いついていってますよね。
M:自分の個性を出していこうとしていましたね。
T:小さい頃は内気な少年だったのに(笑)これやっていうのがあったら人間って大胆になるもんなんですね。
M:変わったのかもしれませんね(笑)他に好きな事がないんですよね。小さい頃からの友達にもよく「昔からそういう事やりたいって言って、そうなってるよね」って言われますしね。基本的に他に好きな事がないんですよ。
T:好きな事をずっとやってきた流れが今現在の増田さんなんですね。それって一番まわりからしたらウラヤマシイ事なんですよね。
M:でも僕は周りがウラヤマシかったんですけどね。他にいっぱい好きな事があって。趣味が他にあって(笑)僕の場合は好きな女の子と別れても物語つくったり、そんな事をやっているんですよ。なんか、何かをポッと失ったとしても結局残っているのはコレかなって思った時に・・・他にないっていうか(笑)これわかります!?気晴らしに違う事やったらいいのに。
T:わかります!!別の同じ事をしてしまうんですよね(笑)
M:今、嫁と結婚して一緒に仕事をしていますけど、付き合ってる時にした手紙の交換とかも、「物語のココのオチはこうだと思うけれども、果たしてこれでいいのだろうか」みたいな事を書いているんですよね。付き合ってる子もそういう感じで大丈夫な人じゃないとダメなんですよね。知らない間にコミュニケーションが制作の事になってるんですよね(笑)
T:何かある意味職人ですよね。で、話は変わるんですが、日本というかアジアのCGアニメーションのシーンについてはどう感じていますか?
M:アジアは少し遅れているような気はしますね。ハリウッドが先攻してCGアニメーションをガンガン作っていく中で、韓国とかも日本と同じくらい作っているんですが作品としてはまだ成功しているとは言えないかもしれませんね。商業的に失敗していたりね。CGアニメーションもひとつの地位を確立したなって所まではいっていないと思います。まず、アニメージュの表紙にはならないですよね。セル画アニメーションを好きな人はどうしてもCGと聞くと懸念するというか、客の方がまだまだ保守的なところがありますから。
T:昔からいわれるアニメ好きというところからの支持はまだまだという感じなんですかね?
M:簡単に言ってしまうと日本のアニメーションはそういう点では閉鎖的なのかもしれませんね。人形・キリ絵・砂絵もそうですけど、アニメーションって幅広い表現が可能なジャンルじゃないですか。でも今観ているのはセル画のアニメーションだけじゃないですか。そこだけでムーブメントが起きていると考えると閉鎖的かなと。アニメ大国だとは言われていますが、本当の意味でアニメーションだと幅広いですからね。それらを全部拾い上げたうえでカルチャーになっているわけではないんですよね。萌えアニメーションというか・・・それを中心としたというか。全部が持ち上げらられる様になれば本当の意味でアニメ大国になるのかな。たぶん日本のアニメーションがマンガを中心としているから。マンガに引っ張られているというか。
T:逆にCGアニメーションがあることで、一般の人でも入りやすくなったかなって思うんですが。ポピーもそうですけど、ブラックよりなアニメも増えてきましたしね。
M:そうかもしれませんね。でもポピーは前作ですしね。その後に「ガラクタ通りのステイン」がありますし、それはアメリカのフージョンという所から、6カ国の英語圏の国でDVDが発売されるんですね。で、フージョンはポピーとステインを観て、ステインの方が拾われたんですよね。それが僕としてはまた面白いなって思っているんですよ。国内ではなく海外での評価の方が高かったっていうのがね。

T:今やっている「Fanny Pets」もまた感じが変わりましたよね。
M:プロデューサー側がお笑い系の方を作ってみないかっていうのがあったのと、僕の中でもう一度視聴者が何を求めているのか再確認をしたかったんですよね。キャラクターもすごいシンプルなものを作りましたし、お話もポピーとステインを混ぜたような・・・ステインのちょっと切ない感じのものも入れつつ、でも全体的にポピーみたいにシュールな笑いに仕上げてみたらどう評価されるのかなぁって、ちょっと自分としてはお客さんを意識しましたね。片方は海外で受け入れられたけど、国内ではダメだった。片方は国内では良かったけど海外には拾われなかった。この中間をとってみたら周りはどう観てくれるだろうか?みたいな感じで。4作目はちょっと雰囲気は変えてみようかと思ってますけどね。
T:この業界に入って大変だった事ってありますか?
M:最初嫌だったのは、業界のプロのみなさんがいるんで、学生あがりでワクワクしていたんですよね。でも1年あたりでだいぶナメたんですよね。生意気に。そのきっかけは、とあるサンタクロースのアニメーションを作るにいたって、あるアニメーション映画の脚本家が選ばれたんですよね。で、僕もつくってみたかったんで話を書いたんですよ。会社が実際にストーリーを読んで僕の方が面白いっていう事になったんですね。でも名前はその人の方が売れているということで、その人が書いたことにしようとなったんです。
T:ゴーストというヤツですね。・・・書きますよ(笑)
M:書いてもいいですよ(笑)その人もプライドがなかったのか、オッケーしたんですよね。まぁ、企画自体が潰れてしまったんでよかったんですが。その後、僕の名前で絵本として世にでたんですがね。結果的には新人の僕の方が中身が選ばれたんですけど、ネームバリューみたいなところが持っていく時もあるんだって思った時に、全然いけるなって思った時がありましたね。
T:どの業界でもあるんですね(苦笑)
M:そういうのがあったから、人に絶対に真似できない自分の名刺がほしかったんですよね。これも裏話なんですけどね(笑)某名作劇場でね、監督さんが引っ張ったんだなって思った事があったんですよ。その作品の脚本家の方は自分が書いたって公に言っているんですけど、その人の次の作品を読んでもあんまり良いと思わなかったんですね。で、裏をよくよく聞くと監督さんが脚本を書き直しているんですよね。やっぱり才能があるは一人なんだって思いましたね。そういう政治的な中で生き残っていくというか、自分を出していこうっていうのが大変かなって。プロデューサーによっては才能のある人を出していく人もいるし。まぁ、その時の上司とか上の人がどう考えるかによりますね。でも、自分を出さないより絶対に出した方がいいですよね。
T:外からのイメージだとそんなにアピールをする世界ではないのかなって思っていたんですが。黙々と作品を作っているというか。
M:「リング」とか「らせん」の映画のプロデューサーで仙頭さんって方がいらっしゃって、他の大学で教えているんですが。コイツ良いなって思う学生もいるらしいんです。でも、自分にやりたいですって言ってこない限りその事は言わないらしいんです。言ってきた時に初めて、そいつから言ってきたっていうことで雇う事もあるらしいんです。誰かが拾ってくれるだろうって思っているより、絶対に言った方が良いと思います。
T:共通でインタビューさせてもらっているアーティストさんに答えてもらっているんですが、世界で一番美しいものと醜いものは何ですか?
M:自然かなぁ?自分が孤立している時に最も癒されますからね。そんな時に美しいなって思う事がありますよね。空の青さもそうだし、凍った湖もそうだし。単純に自然といっても脅威もありますし、優しいだけじゃないんですけど、僕が言っているのは優しい自然の方ですね。癒されるし、感動しますしね。醜いもの・・・自分・・・。
T:何でですか?
M:自分の内面・・・さっきの話と矛盾するんですが。自分を出すのが良いって言ったんですが、自分の我欲を出すっていうと自分が汚れていくんじゃないかなって思う事があるんですよ。何かのマンガで読んだんですけど、ミケランジェロはお世辞にも聖人とは言えない。だけど、彼の描く絵は世代を超えて人の心を打つ。つまり汚れているからこそ、その魂が天を目指すみたいな事を言っていたんですよ。僕はあぁって思った事があったんですよ。人の心をすごく感動させる絵や音楽を作る人が全て美しい心を持っている人ではない。汚れているからこそ飢えた様に自分の魂が美しいものを求めるのかなって。もちろん美しいものをもってはいるんですがね。美しいものを求めている人かなって気がするんです。あとは、僕は本当の幸せを知らないっていうのかな。うまく幸せを見つけられないんですよ。だから欲深いんですよ。作品を作るにしても、カッコイイ言い方をすると飢えてしまう。作った事で心が全て満たされるかっていうとそうではない。それは不器用で、すぐそこにある幸せを気づかない人が多いんじゃないかなって。ある部分では醜いんですが、ある意味では向上心に繋がるんですよね。それが良い悪いじゃないんだけどね。美しい生き方をしている人は、自然の中で素直に感動して、素直に生きている人なのかなって。わざわざアニメーションで加工したりとかやらない気がするね(笑)

T:話は変わりますが、ファンのみなさんも気になっている新作の事をお聞きしたいんですが。
M:掲載されている頃にはキッズステーションで4月からスタートしていますね。組んだのがテレビ神奈川とKBS京都なんですね。その2局で発表して、その後キッズステーションとかで発表するっていうポピーやステインとかと違う流れをつくってみたんですね。地上波の全国区の番組枠は代理店が買い占めしているんですね。だから僕らには権利が残らないんですね。クリエイターに権利が残らないっていうのはおかしな話だと思ったので、それだったら地方のローカル局と組んで、何か新しい動きをつくった後に口コミで広めていくっていう地道な、その代わりクリエイターの方にも権利が残していくようなシステムができたらと思ってプロデューサーとやっていこうとしているんですね。
T:クリエイターがつくっていくシーンを実践しているわけですね。
M:普通にやるのが好きじゃないのかもしれませんね(笑)
T:「Fanny Pets」の次の作品は?
M:今「Fanny Pets」が1クール目が終わって2クール目が制作されていまして、その後は・・・子育てに関しての作品を作ろうかなって。今度は誰も死なない作品で。死のにおいを感じさせないアニメーションとして、子育てをテーマにつくろうと思ってるんですが。でも、ホントは子育てって死のにおいがプンプンするんですけどね。例えば、お母さんが公園で子どもを遊ばせていて、ジャングルジムで子どもが遊んでいるとしたら、その風景って外から見ていたらほんわかするんですが、この高さから落ちたら首の骨が大丈夫か?って常にお母さんは危険を考えてるんですよね。心配しながら、でものぼる練習もさせなきゃいけない。すごい平和そうな公園の風景でも、お母さんの頭の中には死の恐怖が渦巻いているはずなんですね。育てる側の心理的葛藤を面白おかしく見せて、全体的にはほんわか見せてっていう感じですね。
T:面白そうですね。
M:この間計算したら、これを作るのに1億かかるっていうのがわかったので、国内での映画を作るのにかかる費用と同じくらいかかる短編の12本の話はどうなんだろうって考え中です。
T:アートヤード誌で読みたいアーティストはいますか?
M:スピルバーグ監督の本音が聞きたいですね。さっきの話からすると、彼は不幸だと思っているんです。あんなに製作しなければいけないっていう飢えって・・・。あれだけバイタリティーがあって作ってしまうその精神っていうのは、何かが壊れてしまっているのかな?って。どこが壊れているのかな?って。言ってしまえば映画界の王様みたいなものじゃないですか。でも、王様ってかなり飢えていると思うんですね。お金でもなく、名誉でもなく、飢えなのかなって。それがずっとひっかかるんですよね。あと行定監督とかも聞きたいですね。いろんなジャンルの作品を監督をしているのは何故?っていう感じで最終的な目標はどこなんだろうって聞きたいですね。
T:アートヤードの読者にメッセージを
M:アートヤードの面白さってアーティストの本音が聞けるじゃないですか。僕もいろんなインタビューを受けて、プロデューサーが言っていた言葉なんですけど、監督はうそつきなんだよって。製作の時にそんな事言ってなかったじゃないってね(笑)そんな事まで聞ける面白さって、同時に自分がクリエイターだったら頭に少し残しておいて損はないよ。だから記憶に残しておきなさい(笑)
インタビュー:滝本章雄
Photo:山口千予
【増田龍治】
1968年生。CGアニメーション監督
「ポピー・ザ・ぱフォーマー」2000年
2002年コロムビア ゴールドディスク大賞受賞
「ガラクタ通りのステイン」2003年
2003年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞
京都造形芸術大学教員
日本映画監督協会会員
http://www.garakuta.ws/popdeath.html










