その衝撃的な作品との出会った瞬間、Art Yard informer No.10のイメージが完成した。セラミックス造形表現の可能性を探る林氏の「人」に触れる。
小さい頃はどんな子どもでしたか?その環境の中で現在に影響するような事はありましたか?
とにかく作ることが好きな子供でした。3歳ぐらいの時、自分でかんだガムで小さな動物を作って周りの大人を驚かせたこともあるようです。粘土細工も好きでしたし本の付録なんかに付いてくる紙工作も好きでした。当然ガンプラなんかもよく作りました。手先の器用な子供でしたね。小学校時代の粘土作品はよく市展なんかに出されていましたし、プラモなんかの完成度も高かったですよ。オリジナルでスクラッチビルドに近いこともやっていました。田舎の狭い世界の中ですが、客観的に作る技術に関しての才能の自覚はあったと思います。
学校に入る以前から百科事典や図鑑などを見るのが好きでしたし、本もよく読んでいました。学校の勉強で苦労した記憶は全くなかったです。むしろ好きな方でしたね。知識が増えること、問題を解くことに喜びを感じていましたし、小中学校の学習内容は授業を聞くだけでほぼ100パーセント理解できました。自分で言うのも何ですが結構頭の回転の速い、よくできた子だったと思います。自慢みたいでスイマセン…。ただ今ではどんどん道を逸れて「よくできた大人」から対極の位置にいますけど(笑)。
よく物事や社会を斜めから見ているといわれていましたね。今でもそういう傾向はあります。価値観や常識や正しいと思われていることについて常に違う角度から見ています。自分では捻くれているとは思った事はないですが、よくよく考えてみると幼少時代も今も、かなり捻くれていますね。人と違うことをやりたいっていう意識が特に強かったと思います。

作品を見た瞬間に、かなりの衝撃があったんですが、何故この作品を作ろうと考えたんですか?
えー、一言で説明するのは難しいですが、ずっとこれがやりたかったんだ!という作品です。SFは好きだし、ロボットなんかも好きで、そういうものを作りたいっていう思いはずっとあったんですが、やきものを素材として扱っているといろいろな葛藤がありました。僕のやりたいことと陶芸の世界では方向性が明らかに違う。陶芸だけではなく、もっと広いジャンルでの勝負がしたいと思ってはいるものの、具体的な方法論が見えてこない。素材、技法、ジャンルについて、結構長い間試行錯誤が続きました。
そんな試行錯誤のひとつに「KAGUYA?SYSTEM」があります。やきものの素材感と自分のやりたかった世界観の融合ができた自信作も、その公募展では全く評価されなかった。この時は本当にがっかりしましたね。陶芸からも駄目、彫刻からも駄目、そこで評価されることが目標ではないにしても、どこからも評価されないというのはなかなか辛い。これだけやっても駄目なのかって思いました。ただ自分自身、いい作品ができたと思っていましたし、方向性は間違っていないという確信はありましたし、技術的な部分での飛躍もありました。一般の方の反応もすごくよくて、そういう応援に助けられました。
しばらくして夢創館という神戸の現代アートギャラリーが偶然「KAGUYA-SYSTEM」を見つけて声をかけてくれました。僕自身ちょっとくさってた時期なので半信半疑でしたが、会って話をしてみると、僕のやろうとしている事を真剣に評価してくれていることが伝わってきました。現代アートとして評価してもらえるというのは願ってもないことでしたし、今までのモヤモヤがぱあっと晴れていく感じでした。現代アートなら何でもありだろう。それならやりたいことぶちまけてみるか!って感じで「Q.P」の制作に入りました。もしもあの出会いがなければこの作品は生まれていないかもしれないですね。また長い葛藤の時間が、やってみたかったアイデアをいい方向に熟成してくれたんだと思います。
林さんが影響を受けたアーティストを教えて下さい。
数え上げればきりがないのでとりあえず…、陶芸では深見陶治、リチャード・ノトキン、伊村俊見、彫刻では高村光太郎、三木富雄、細川宗英、天野裕夫、造形家では竹谷隆之、絵画ではシュールレアリスム全般、ピカソ、クリムト、岸田劉生、イラストレーターは、永野護、出渕裕、プロダクトデザイナーは深澤直人、吉岡徳人、音楽はミスチル、小説は村上春樹、映画はキューブリック、お笑いはラーメンズ、現代アートは榎忠、ヤノベケンジ、…多すぎてまとめきれません。

今後、やってみたい表現はありますか?または、今、興味をもっている事はありますか?
やってみたい表現については、いくつかアイデアはありますが具体的にはまだ秘密です。もちろんセラミックです。興味をもっているというより差し迫った最重要事項は明日の糧についてです(笑)。あとは、政治的、社会的、文化的に、これからの日本の進む方向ですね。もうとっくの昔に成長期から成熟期に入らなければならないのに全然だった。今回の参院選をみてやっとそういう時期に入ったのかもしれないと思うんですけど、ただ成熟させる土壌があまりにも危うい。急激な成長期に本当は壊しちゃいけないものまでブルドーザーで地ならししちゃった感があります。ただ今更壊されてしまったものについてノスタルジックに嘆いてもしょうがない。ネオ日本文化なるものを、あるひとつの文化的モデルケースとして、これから創っていけばいい。というか絶対に創らなければならない。社会的にもアートの役割ってのが特に大事な時期にきていると思います。人生における価値が権力だとか金だとか学歴だとかってあまりに悲しいですよ。子供たちの未来がかかってます。
あとはそうですねー。海外でのコミュニケーションをスムーズに進めたいので英会話頑張ってます。DSで。
世界で一番美しいと思うものは何ですか?また醜いと思うものは?
...難しいですね。 ...美しいと思うものは、やはり「人間」です。醜いと思うものも「人間」ですね。
このインタビューを読んでいる表現者たちに何かメッセージをお願いします。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。アートに関わっていると厳しい日本の現実の中でくじけそうになることは日常茶飯事です。それでもそこに何かしら関わっていられる僕らは、そうしたくてもできない人たちや、その価値に全く気付かない人たちに比べれば、少なくとも幸せであると思うんです。アートのない人生ってあり得ないですしね。僕はライフワークとして本当にそれが続けられなくなるその日まで活動を続けます。そのためには、これからもいろんなものと戦わなければならないけれど。結局、最大の敵は自分自身なんですよね。こんな事やってる人がいるんだ、と記憶に残してもらえると嬉しいです。
林 茂樹 ハヤシシゲキ
1972年生まれ、岐阜県出身、東京都府中市在住。陶素材を扱う造形家、アーティスト。大学では国際関係学を専攻、卒業後、地元多治見にて陶芸を学ぶ。SF、マンガ、アニメ、フェティッシュなどサブカルチャーをエッセンスとして、伝統的な陶芸とは一線を画す、独自の陶世界を表現する。2006年、神戸夢創館で個展。最近では、海外で注目を集め始め、内外でも活動の場を広げつつある。












