The Qemistsほどサウンドに対して実直なバンドがいるだろうか?真摯に音に向き合って作り上げたワイルドでクレイジーなアルバム「Join the Q」。ロック、ドラムンベース、ダンスの要素で織りなされた猛烈なサウンドは、無視できない程の生々しい存在感をアピールしている。このブライトン出身のバンドが東京と大阪でどういったインパクトを残し、次なるサマーソニックでどう観客を魅了するのか?彼らがすべてのロック・ファン要注目のグループであることは間違いない。
●以前から生計を立てるために音楽を作ることになるだろう、と考えていましたか?
レオン:僕たちは数年間プレイしているが、音楽を生業にする決意は最初からあった。他のことはやりたくてもできないよ。呪いみたいなもんさ。お金を稼ぎたい、という気持ちになっても、僕たちは音楽に戻らないといけないんだよ。
ダン:以前誰かが僕に聞いたんだ。「もし君が音楽をやっていなかったら何をしているか?」って。で、僕は完全に答えに困ったよ。なぜなら、音楽は僕たちの生活の中で大きな存在だし、リラックスするためや仕事としてやっているから、音楽は全てを包括しているんだ。
リアム:でもさ、俺たちがキッズとして始めた時って、全て楽しみのためやゲームみたいなもんだったよね。エンターテイメントだったんだよ。多くの点では今もそうなんだ。大変な仕事だけどね。でも「楽しむ」という側面は維持しないといけないよね。
●なるほど。例えばどのようにしてそれを維持していますか?
レオン:物事をシリアスに捉えすぎないことかな。
リアム:あるいは、自分自身に対してもね。
ダン:自分自身の為に音楽をやる。自分が満たされ、楽しむためにやるんだ。オーディエンスの事をあまりにも考え過ぎてしまうと、自分が誰の為に音楽をやっているのか、自分の方向を見失ってしまうと思うよ。
レオン:ご褒美をもらうために音楽をやるんじゃないんだし、いつでもそうであるべきだ。音楽をやる事自体が自分へのご褒美でないといけないし、曲を書く事も同じ事だよ。たとえ誰もそれを聴かないとしても、そうでなくともそういう感覚はそこにあるべきなんだ。
●その通りですね。このメンバーで一緒に演奏することでグループは動きだしたんですよね?
リアム:皆で楽器を手にとって、一緒に演奏し始めたんだよ。
ダン:関わっていた人たちも沢山いたんだけど、年月が過ぎて、いつも僕たち三人を残して去っていったんだよね。同じくありふれた事ではあるんだけど、多くのシンガーが現れては去っていったよ。
レオン:僕らは多くの異なるメンバー構成や、別のバンドでの演奏やDJ、サウンド・エンジニアなど、ほぼ一通りの事を経てきたんだ。
●では、そんなThe Qemistsが影響を受けたのは誰ですか?
レオン:すっごく沢山あるね。実はちょうどこのインタビューを始める前に考えていたんだよ、僕がSikThってバンドをどれだけ好きなのか!ってことをね。プレイのテクニック的なことや、彼らの使っている音などで彼らからは多大な影響を受けているよ。ドラムンベースは驚くべきも多くのものがあると気付かされるね。例えばChase&StatusやSub Focusとか・・
リアム:ロックの面ではみんなが好きなRageAgainst theMachineや、MarsVolta、それにRedHotChili Peppersなんかもだね。かなり大きな括りだけど。
ダン:それと、ジャズやクラシカルなもの、それにエレクトロもだね。
●日本の音楽を聴く機会なんかはありますか?
レオン:そんなにはないんだけど、Plus-Tech Squeeze Box(「スポンジ・ボブ」の映画版サントラなどに参加している日本のユニット)は奇妙なやり方で素敵だね。彼らがJ-POPとして定義されるのかは分からないけど、でも彼らの奇妙な感じが僕は好きだ。ほんとに入り組んだ構成のアレンジだからね。あと、Nirgilisというバンドも好きだね。
リアム:今回は僕らにとって初めての日本なんだ。でももしHMVやタワーレコードに行ったら、僕らが見逃している本当に多くの種類の音楽がそこにはあると思うんだよね。
ダン:渋谷、それに東京のあちこちを歩いていると本当にたくさんの音楽があるね。でもイギリスでは日本の音楽とかを手に入れる方法がそんなに多くないから、把握しておくことが本当に難しいんだ。ほら、そういったものがホントにいたる所で手に入るし、これはまさに良い経験だよ。
●そうですよね。The Qemistsのライブについてはどうですか?東京と大阪では観客の感じも違いますか?
リアム:大阪では、みんな少し激しい感じだよね。
レオン:東京のお客さんも元気だけど、繊細さの点でほんのすこし違うかもね。東京の観衆はきちんとまとまっていると思うし、完璧な観客だと思うよ!いつ、飛び上がったり、いつ防壁越しに人をブン投げたらいいのかってことを分かってるし(笑)大阪は熱くて、汗まみれでクレイジーだった。でもどちらのギグも最高だったんだ。あと、サマーソニックの観客もすごく良いって聞いているよ。
●そのようですね。ではニューアルバム("Join the Q")についてお伺いします。まずは今回のアルバムのテーマはどのように展開させたのですか?
レオン:僕たちは、打ち込みたい特別なゴールを持っていたんだ。座って僕たちがこれから作るものに対してよく話合ったんだよ。アルバムに収録される全てのことについて確かめたかったんだ。ダンスフロアでも聴けるロックサウンドになっているかどうか?とか、ギターの音が厳しすぎないように、そしてベースがそれに全て合っているかどうか。自分たち自身を伸ばしてやり、入り組んだアレンジをやる為にもね。こういったことは、文字通りチェック・ボックスでアルバムレコーディングの間に確認したよ。全ての曲をリストにして、それらの曲を3年の道のりで変えていったというわけさ。
リアム:僕らはこのアルバムを従来の、言葉通り「アルバム」という形で作りたかったんだ。リスナーが最初から最後までを聴いた時の流れや、曲と曲のつながりの要素を大事にしたんだ。それに音響的な体験も。ただただ純粋に作りたい音楽を作ったのさ。僕らの頭の中にある音楽を可能な限りたくさん描いてみたんだ。
レオン:僕らが作るものは、一日や二日で出来るトラックじゃないんだ。一年か二年はかかるようなものだよ。だからこそ変化や洗練を与える事が出来た。ほとんどのトラックは100以上のバージョンがあるんだよ。実際、最後にミックスダウンした"LostWeekend"という曲は100バージョン中の100バージョン目だよ。
●なるほど。ところで、どのようにしてヴォーカリストとコラボレーションしたのですか?
レオン:トラックを送って、もしその人が気に入ったら返事してくれる感じだよ。気に入ってくれない場合は、返事がなかった。
リアム:ボーカリストとのやりとりはそんなになかったよ。ただトラックを送って、彼らがスタジオでのセッションに参加できなければ、やはりやらないことになったり、それでもやる場合はヴォーカルを送ってきてくれたよ。僕らは何も注文する必要はなかったんだ。送られてきたボーカル・トラックに対して「う~ん・・これどうしようか迷うな・・」なんてのはなかった。それぞれのヴォーカリストはとてもハイクオリティーで十分使えるヴォーカル・トラックを送って来てくれたんだ。
ダン:ただ、僕らが成し遂げたいことや、求めているテーマについて、彼らのうちの大半の人とは前もって打ち合わせをしたよ。たとえばMike Patton(Faith No Moreのリード・ヴォーカリスト)の場合、僕らは彼にただフルレンジで歌ってほしい、って頼んだんだ。
レオン:曲をクレイジーにして、それから自分の経験や気持ちを歌や歌詞に織り込んでてくれ、と頼んだ。
リアム:実を言うと"DemNaLikeMe"で一緒にやってくれたWiley、彼にはただトラックを送ったんだが、彼には僕たちが欲しいものを言ってなかったんだよね。
レオン:でも、それって最初からサビの歌詞は決まっていたんだ。"Dem na like me"(彼らは俺のことが嫌い)って歌詞なんだけど、それは自分が他の人に嫌らわれることについてなんだ。じつはそういった歌詞の曲が2曲あって。"Drop Audio"もそうなんだけど、「それはダメだ」って偉そうに言う人たちについて歌っている。彼らは正しいかもしれないけど、そんなのクソくらえ!だね。あのトラックはそういうメッセージなんだよ(笑)。
●(笑)そういえばあなたたちはブライトン出身ですが、地元のミュージック・シーンについて教えてくれませんか?
ダン:幅広いジャンルが存在する、最先端のシーンだね。イングランドの多くの都市のうちの一つだが、週末の夜は様々なジャンルのバンドが観られるし、満足出来そうなクラブも見つけられると思うよ。
リアム:大体のイギリスのバンドはいずれはツアーでブライトンに寄るから、もしブライトンに住んでいたら、割といろんなバンドを観ることができるはずだ。
レオン:そういえば"Steam Punk"ナイトって呼ばれているのがあるんだよね。聞いた事ってある?もしもビクトリア女王時代(1800年代)の人々が蒸気機関のタイムマシーンで時空を超えてこの時代にやって来て、パンクを発見したとする。でも彼らは電気がないわけで、電気無しで曲をつくる。それがSteam Punkっていうわけ。
●そ、それって上品なパンクみたいなかんじですか?
レオン:彼らは皆、ビクトリア女王時代の服を着て、片眼鏡とトップ・ハットとか、全部そんな感じなんだ。で、実は楽器はちゃんと電気につないでるんだが、でも楽器類はマンドリンとかそういうものなんだけど、ディストーションをたっぷり掛けているんだよね。それで、バックでは白黒ムービーが流れているんだ。
ダン:ウソだろう!(笑)
レオン:いや、本当にあるよ、そういうジャンルって!(笑)
リアム:とにかく、ブライトンの住民はみんなクリエイターなんだよ。画家だったりギタリストだったり。
レオン:大半の人たちはアーティストと何らかの関わりを持っているんだ。アーティストと住んだことがあったり、アーティストに影響されたことがある、あるいは自分自身がアーティストだったり。
●おもしろいですね。そうしたシーンが出来た理由ってなんでしょうか?
ダン:歴史的なことに理由があるよ。200年、300年前からいつもパーティーをやってるような街だったんだよ。イングランドの休日ってのは昔からずっとそうだったんだよ。「ブライトンで週末はバカ騒ぎ!」ってね。
レオン:ある王子が居て、彼は悪名高いパーティー好きの女たらしだったんだが、その王子がしばしばブライトンに宿営に来たんだよ。で、設営した大邸宅の中からトンネルを掘らせたんだ。通りの女の子の住んでいる家までね。で、行ったり来たり出来るようにしたわけだよ。ま、要するに夜這い王子だよね(笑)
●(笑)日本をたっぷり堪能する時間もあまりないかもしれませんが、日本で感じた事はありますか?
リアム:一つ気付いたことがあるんだが、音楽に対して凄く熱心だよね。それは大きいことだよ。それと、音楽がたくさんの人の生活の中で大部分を占める、ってこともだ。こういうのって励みになるよ。
ダン:それに変わったものがあるよね、なんだろ、機械みたいなので遊んでる人がいるのを見たんだけど。
●え、機械?
レオン:アーケード・マシーンだよ。
●あっ!パチンコですね!(笑)
レオン:あ、そうそう!
●ところで、アートヤードでインタビュー記事を読んでみたい人物っていますか?
レオン:種村匠刀宗家(古武術家)のインタビューだね。マーシャルアーツの生ける伝説だ。彼は玄武館の館長で、ほんとにすごくにインタビューして欲しいよ。でも彼への質問がたくさんありすぎるね。彼は芸術をマーシャルアーツに取り込んでいると思うよ。
リアム:僕はクエンティン・タランティーノにインタビューしてほしいな。今日、ちょうど彼の映画のことを考えてたんだ。彼はとても音楽を良く知っているし、彼の映画での音楽の使い方が大好きなんだよ。彼とレコードを聞いて過ごしてみたいね。かなりのコレクションがあるだろうからね。彼の家の地下はまさにレコード天国だよ。
ダン:NinjaTuneづてにColdcutにインタビューしたいね。
●我々は既にColdcutの二人にロング・インタビューをしていますよ(笑)
ダン:彼らが若者やミュージシャンに与えているアドバイスや、僕らに与えてくれた助力ってほんと感激しちゃうよね。Coldcutのインタビュー記事は、いつも誰かに読むようにお薦めするよ。
リアム:Lee 'Scratch' Perryもだ!凄くおもしろいやつなんだよ。思うにかなり変わっている人物だけど、実はそうじゃない。演じている一部なんだよね。ほんとは非常に高い教養の持ち主だし、そういう人物だよ。
ダン:彼は近いうちに日本にも来ると思うよ!
●では、アートヤードで定番の質問なんですが、The Qemistsのみなさんにとって、世界で一番美しいもの、それから最も醜いものとはなんでしょうか?
リアム:僕にとっては「感情」!「感情」が世界で一番美しいものでもあり、同時に最も醜いものでもあるね!
レオン:すっごいディープな質問だよね(笑)
ダン:音楽が一番美しいものだ、って言うべきだよな。で、もっとも醜いのはパリス・ヒルトンの犬かもね。
レオン:素っ裸の女の子が一番美しいよ(笑)。それと、人種差別的な犯罪は一番醜いことだね。
●では質問を変えて、他のバンドにはできない、The Qemistsしかできないことってあるでしょうか?
レオン:僕はライブにとても誇りを持っているんだ。他のバンドがやらないような方法でプレイしているし、3人が一度に6つの楽器を演奏しているからね。アルバムの要素はギターなんかでもちりばめられている。それに、ドラムキットでも同じ事をしているよ。それをすべてクリック・トラック無しでやっている。僕らのライブは、アルバムを作ったやり方の延長線上にあるんだ。生楽器がエレクトロ・サウンドを生み出している。僕たちのテクノロジーの使い方は特別なんだ。
●なるほど。機材についてはどうですか?
リアム:ほんと、かなりシンプルだよ。ギターには振動を検出するピックアップ・センサーを付けていて、それがトリガーになってノートパソコンのサンプラーから音が出る仕組みだ。それらの音がギターアンプや、ベース、ドラムから出ている生音と混じり合うんだよ。
レオン:均等なボリュームにミックスして、普通は同時に聴こえているはずだ。
ダン:だから一音ギターの音が出るたびに、音が4つ、5つ、10、1000にもなるくらい重なっていくんだ。
レオン:ドラムの場合はいつも10個のスネアドラムのサンプルを使っていて、生のスネアを叩く度にそれらの音が出るんだよ。それらのパッチのいくつかをそれぞれの曲で使用している。まさにいろんなスタイルの音楽を与えてくれるんだ。
リアム:クリック無しだからね、こういう仕組みでバンドの生演奏が入って来ても自分たちでBPMを決められるようにしているんだよ。だから一度たりとも同じような感じにはならないんだ。
●では最後にアートヤードの読者にメッセージをお願いします。
今回は僕たちに会いに来てくれてありがとう。ライブで最高の時間を過ごす事ができた。サマーソニックにもかなり期待しているよ。きっとサプライズがあると思う。今回の来日で僕らを観てくれた人にも、最高にスペシャルなものが観てもらえるはずだよ!
Interview : Owen Austin Cooney
Photo : Yosuke Torii 協力 : beatink


















