男性で美しい声と呼ばれるアーティストはそう多くない。先日、彼が来日した際に行われたライブを聴きに行ったが、シンプルな構成ながらも彼らしいメランコリックな世界観は充分に感じられた。あのJohn Cameron Mitchell監督作品「Short Bus」にも本人役で出演していた彼だが、演奏シーンは映画のキーとなる掛け合いやラストシーンでも登場しているとても重要なものだ。その歌声の波動はすぐに聴く者の心を掴んでいく。来日記念!Art Yard informer × Scott Matthew インタビュー。
●音楽を最初にしようと思ったのはいつ頃ですか?
父がミュージシャンで、昔はプロだったけど子供ができてからやっぱり辞めなくちゃいけなかったんだ。あの時代はちゃんとした仕事を持っていなければだめだったからね。家にはいつも音楽が流れていて、父はミュージシャンの友達を家に呼んでギターをよく弾いたりしていた。「音楽が楽しい」ということを教えてくれたのは父なんだ。
そして僕は自分でギターを勉強して作曲をしてみた。キャリアになるとは思ってなかった。有名になることを目指しても、たいていはそうならないからね(笑)そういう目的じゃなくて、ただ好きだから20代にこれをやろうと決意したんだ。
●影響を受けたアーティストはいますか?
僕はちゃんと音楽を勉強したことがなくて、だれかの音楽を分析して真似することなんかできない。だからあまり直接影響されてないかもね。ただ、「書きたい」という気持ちにさせるアーティストはたくさんいるよ。Chet Baker とか Nina Simone に影響受けたし、彼らの歌の「意図」はすごく勉強になった。あと、The Smithsにはすごく刺激されたよ。
●そういえば、The SmithsのMorisseyのドラムを叩いていたSpencer Cobrinとバンドを組んでいましたよね。
そう!信じられる?スペンサーと一緒にバンド始めることになったときはすごく嬉しかったよ。
●ところで、あなたの曲はすごく「詩的」だと言えると思うのですが、作曲するときは歌詞それとも曲のどちらから始めますか?
同時に書くね。ノートには詩とか書き込んでいるけど、ほとんどはいきなり曲が生まれるという感じかな。退屈だったりなにかを考え込んだりしているとき、ギターかウクレレをもってコード進行やメロディーを考えて、歌詞を書く。 歌詞にメロディーとアレンジを付けるのが大事なんだ。歌詞は音楽とおなじぐらい大切だ。僕の曲の音楽はいろんな要素が入ってないから、歌詞が前に出るんだよ。そういう目的で書いている。
●なるほど。ウクレレを使うというのはおもしろいですね。
実はウクレレは弾かざるを得ないことになってしまったんだ。事故で指を使えなくなってしまって、ギターも満足に弾けないからウクレレに変わった。事故の前にもちょっと弾いたことはあったけど、この事故によってメインの楽器になったんだ。でもギターより全然弾きやすいよ。弦が4本しかないからね!
●昨夜、菅野よう子さんとのイベントに出演されましたね。菅野さんとのコラボレーションはどういう風に生まれたのでしょうか。
8年前ぐらいかな。彼女がアルバムのレコーディングとマスタリングのため、ニューヨークに来ていた。そしてその頃 Cowboy Bebop のサウンドトラックに出てくれるボーカリストを探していたんだ。オーディションにデモテープを出したけど、彼女はあまり僕の声を気に入らなかったみたい。ただ、そのオーディションを企画していた女性が、僕のCDを聞いて、僕がぴったりだと確信したようだ。だから一度、菅野さんの前で生で弾いたら気に入ってくれるだろうと言って、やってみたら実際にそうだったんだ。それから菅野さんが僕のボーカルのために曲を書いてくれた。
●レコーディングの時、映画の内容はご存知でしたか?
アニメについてなにもわかってなかったよ。今でもあまりわからない。熱心なファンがたくさんいること以外はね(笑)。
● 「ショートバス」という映画にも曲を提供していましたね。今日見てから来ました。
え?そうなの?とてもショッキングだったでしょう?
●そうですね、日本人にとっては過激なシーンがたくさんありましたね。
日本人だけじゃなくて、みんなにとってショッキングだったよ。僕の親もびっくりしちゃったよ(笑)。
●でも切ないシーンもたくさんありましたよね。
ジョン (監督のJohn Cameron Mitchell)が僕にやってほしかったのは、ああいう過激なセックスシーンを拮抗する瞬間を造ることだったと思う。音楽によって見ている人達の感情を引き出したかったんだと思う。
●なるほど。この映画サウンドトラックに参加することになったきっかけは?
ニューヨークのパーティでジョンに会った。彼はその時映画の製作準備段階で、役者を探していた。脚本がすでにできていて、ある役を探していたんだ。それが結局僕になった。そして、僕は彼に自分の音楽を渡して、彼は気に入って僕に脚本を渡した。そのあと僕が曲を作って彼に提供した。本当に早くて簡単に決まったものだったんだ。楽しいプロジェクトだったよ。
●では、現在気になっているミュージシャンなどはいますか?
ほとんど僕の友達だよ。 本当にすごいものを作っている友達がいるよ。例えば *Joan as Police Woman は大好きだよ。あと *Chirs Garneau。そして、僕のアルバムで歌を歌ってくれる女性がいて。彼女の名は*Holly Miranda。彼女はビッグになるよ。最近アメリカのExcel Recordsと 3アルバムの契約を結んだしね。 本当に尊敬する人だ。 みんなニューヨークにいるんだ。ただ、ブルックリンに住んでない人は、そこにいるミュージシャンは皆友達でいつも一緒に遊んでいるとか思っているみたいだけど「皆」は知らないよ。例えば、MGMTなんか会ったことないよ(笑)。
●ところで、好きな日本人アーティストっていますか?
若いときはShonen Knife を聞いていたよ(笑)。オーストラリアでは有名だったんだ。
●音楽以外からインスピレーションを受けますか?
僕の曲はすべて自叙伝的なものだから、全部自分の経験から来るもの。そんなことを言ったら、僕がすごく悲痛で不幸な人生を送っているように見えるが、完全にそうではないよ(笑)。あとよく聞かれるのは「ニューヨークはあなたの音楽にどう影響していますか?」だけど、場所自体が僕の音楽を影響しているわけではない。そこで出会う人達が影響するんだ。そうなると、世界中にいろんな人がいて、その人たちに会えばその経験にも影響される、というわけなんだ。
●そうですね。明日のライブはどういう構想で行おうと思っていますか?
日本にいるセッションミュージシャンと演奏するから、いつもとちょっとちがう。4、5人ではなく、2人だけでやるからね。明日はウクレレとピアノだけ。あと、彼はギターもできるからそれもちょっと入る。ファーストアルバムとセカンドアルバムの曲を両方やるよ。
●今後の予定を教えてくれますか?
10日にニューヨークに戻って、12 日にヨーロッパに行く。Montreux Jazz Festival という、スイスのとても有名で伝統的なフェスティバルがあるんだ。それに誘われたのがすごく嬉しい。それからは7月の終わりにまだツアーをする予定。ドイツのレーベルが僕とスペンサーの昔の曲を出したいみたいなんだ。サードアルバムに関しては今ちょっと休憩中だ。この2年間はノンストップで働いているから完全にクリエイティビティーを燃やし尽くしたくないんだ。でも、サードアルバムで一応考えているのは、デュエットなんだ。何人かの歌手とのコラボレーションを考えて、曲を書いて、いつかその人達にアプローチするんだ。やってくれるかは後でわかる。(笑)
●Art Yard informerにインタビューをしてもらいたい人はいますか?
Antony and the JohnsonsのAntonyは読みたいね。聞きたい質問があるから。どうやって活動を行っているかが知りたいね。ニューヨークで会ったから少しは知っているけど、パーティーみたいなところでしか話してないから親密な会話はできてない。本当に魅力的でおもしろい人で、こういう人が世の中で成功しているのはすばらしいと思う。彼の音楽がすてきだというのもあるけど、ああいう特別な人間でもこの世界にちゃんと場所があるというのは勇気づけられる。うまく社会に入り込めない人にとってのスポークスパーソンだからね。
●なるほど。それでは質問を変えて、Scott、あなたにとって世界で一番美しいもの、醜いものは何ですか?
一番美しいのは愛。一番醜いのは愛の消滅だ。でも、もっと大きな規模で答えるのならば、戦争が一番醜いね。本当に政治が許すことなんて、怒りを感じるよ。
●では、最後にArt Yard informer の読者に向けてメッセージをお願いいたします。
自分のクリエイターとしてのフィロソフィーを築くのが大事だと思うよ。個人の気持ちを表し、正直でなければいけないと思う。そうすれば、「成功」はすると思う。あとは有名になったり金持ちになることはそんなに大切ではない。好きだったら、毎日がんばって、諦めないことが大事だね。
Scott Matthew
official:http://www.myspace.com/scottmatthewmusic
*Joan as Police Woman
http://www.myspace.com/joanaspolicewoman
*Chirs Garneau
http://www.myspace.com/chrisgarneau
*Holly Miranda
http://www.myspace.com/hollymiranda












