楽屋に入ると、シーンを支えてきたバンド達の手書きメッセージ入りポスターに出迎えられ、脈々とつづくステージパスで彩られた壁面。90年代後半の下北沢ブームを支え、数々の良質なグループを送り出して来た老舗ライブハウスのひとつ、下北沢GARAGE。数多くのメインストリームのミュージシャンに愛され続け、今年15周年を迎えるGARAGEの、その過去と現在のビジョンとは?特集対談・下北沢GARAGE×Art Yard informer。
●ではよろしくお願いします。現在、下北沢GARAGEは開店して何年になるのでしょうか?ここ数年で下北沢にも新たなライブハウスが増えましたよね。GARAGEの初期の頃の様子を知る機会は少ないと思うので教えていただけますか?
下北沢GARAGE 出口 : GARAGEは今年の4月で15周年。街と人に支えられ、おかげさまで。街の様子は変わったような、変わんないような。街にいる人々が、いつも勝手でたのしいから過去やら未来やら時間をあんまり感じないかも。いま、いつだってたのしい。みたいな。で、うちが位置してるのが下北沢の北口方面なんだけど、小さな飲み屋さんがたくさんふえたのね。夜の彩りと楽しみがさらに増したかな。そこには変化を感じる。下北のライブハウスもここ数年で増えましたね。それぞれのお店での個性があるから共存というか、勝手にやってるっていうか、それぞれ楽しみ方を知ってる人たちが運営しているので互いに悪い影響ってのがないと思ってて。たくさんのライブハウスやシーンが点在してるところがさらにおもしろさを生んでゆくんだと思います。
ぼくがね、お店がオープンした2年目から勤めてて、GARAGEの初期はね、なんだろーな…正直、あんまり覚えてないかな。ただ、毎日いろんな人に出会うでしょ。アーティストやお客さんや街の人。出会った人といつも全力でブチ遊んでたような記憶はあります。もちろん今につながってる方もたくさんいますし、消えていった方もいます。そして、巡り会いなんです。てことで、あんまり覚えていないってことは1年前も15年前もかわっていないのがGARAGEなのかもしれません。

PHOTO: 『Art Yard informer × 下北沢GARAGE』の一幕
●なるほど。80年代後半の下北沢はよく映画などでクローズアップされますが、いわゆる『ギターポップ・ブーム』のころの時代はあまりモチーフとして見かけませんよね。90年代後半は特に盛り上がっていた印象がありますが、GARAGEから見て現在出演しているバンドさんたちが音楽的にステージで求めるもの等は変わって来ていますか?
音楽的に求めるものは変わってんのかな?その時々のシーンに伴う質感ってのがあるだろうから変わってんのか。ただ…うちにね、出演してるアーティストってシーンからはぐれてるっていうか(笑)、それを望んで突き進んでる方々がおおいから、音楽的っていう解釈も様々で。表現を最大限引き出したい、っていうことはうちのエンジニア・チームが常に追求してるのかな。音もステージも。なにかが流行して、それを模倣するグループが多数出演していればこちらも合理的な商売をしやすいんだけど(笑)この音で、この演出で、この情報で、って。残念なことにオリジナリティあふれちゃってるアーティストが多いから、大変。でもそこが楽しいし、やり甲斐。で、音楽的な心の部分でいえば何も変わってないかも。瞬間から何かを生み出すのって楽しいし、それを伝えたり共有する、したいってのはやっぱり変わんないんだなあ、って思うし、変わらないでほしい。90年代後半も事実として確かに盛り上がったよね。うちのキャパは200程度の狭いところなんだけど、毎晩のように満員だったもん。うちが想像するギターポップっていえばアンダーフラワーの田中さんのなんだけど、イベントもよくやってもらってました。彼を慕ってたくさんのギターポップのグループともであいました。ジャンルを略語で「ギタポ」って媒体でいわれてたのが可笑しくて印象的です。あと、ArtYardの最重要人物、滝本氏のグループも活躍しています。(笑)その頃シーンを支えてもらいました。
●どうも(笑)…って今でも支えてますよっ、と。ぼか、バンドと雑誌は同じ感覚でやってるんで。では、質問を変えて…、現在までにガレージで行われたイベントや、アーティストのライブで印象に残っているエピソードなどがありましたらお聞かせいただけますか?いろいろとありそうですが、たくさん教えてください(笑)
そう、たくさんあるんです。だから、ざっくりと。まず、最近だとスネオヘアーっていう良い歌をうたうミュージシャンがいて。活動の節目で単独公演をしてくれるんです。彼がデビュー前ここでよく活動してくれていたんですが、その頃の思いと現在とが強く混じり合う、すばらしい特別なライブを毎年見させてもらっています。そしてランクヘッドはGARAGE初の5DAYS公演を開催。下北の街も巻き込んでのイベントは、彼らが大切にしている音楽・人・場所をすべて織り交ぜたイベントでした。ACIDMANの初ワンマンもうれしくてなんだかこちらが緊張したし、ART-SCHOOLの木下氏主催のKINOSHITA NIGHT初回も彼の美学満載で印象的でした。デビュー前のBase Ball Bear小出氏主催の"RIHOMI NIGHT2"は彼のユーモアを感じるイベントでしたし、FoZZtoneは大切なツアースタートにここで特別なライブをしてくれたり、ペトロールズは斬新なイベントを常に開催するし。まだまだ、たくさんあるんだけれども、みんなが知っていても知らなくてもここではたくさんの特別が溢れてんだなあって改めておもい出せました。いま。
●なるほど、そういった消えない「特別」に溢れている場所は凄く貴重ですよね。出口さんとも個人的にとても長いお付き合いですが、最も思い入れのあるライブハウスとして、10年以上経った今も関わりがあるのはArt Yard informerとしても嬉しいですね。GARAGEのレギュラー・バンドは昔からむき出しの(笑)、生々しいスタンスが伝わるグループが多い気がしますね。
アーティストが、音楽もそうなんだけど、活動や姿勢を伝えるための出来事がやっぱり多いです。いま、やりたいことをやる。みたいな筋肉が発達してると思います。アーティストもスタッフも。直ぐに疲れがでちゃって飽きちゃうけど。あとはねー、ここ数年毎年12月26日に開催しているMr.カラオケ。簡単にいっても難しくいってもただのカラオケ大会なんだけど。いろんな都合で出演者の詳細は伝えられないんだけど、歌をうたうってことと真正面から向き合っている姿は感動さえおぼえます。それをカラオケ機器で採点するっていう残酷さもユーモアがあって可笑しいです。
●機械採点…鬼畜ですね…(笑)ある意味フラットな。
年末のダラーリとしたイベントではなく正に生命をかけたビシビシな真剣勝負なのです。それと、ニューRESCUEという、直感最優先のイベントが最高です。レギュラーの出演者がほぼ飛び込みで直感で挑戦するイベント。これね、好きなの。つくられたエンターテイメントももちろんすきなんだけど100%を目指して80%できてオウケイってことではなく、直感でやったことが結果的に10%だったり300%だったほうがライブハウスとしての魅力がでるんだと思うんです。笑えるし泣けるし。感動できる。で、なんだっけ?そんなかんじかなあ。
●レギュラー出演者が飛び込みってのはイイですね。ところで、GARAGEのあの楽屋はすごく独特な雰囲気を持っていますよね。アーティストさんが本番前を過ごす場所、そしてGARAGEのみなさんがお仕事をされる場として何かこだわっていることはありますか?本当に昔から現在まで、一貫して快適に過ごせますよね(笑)
特別につくってるつもりはなくて、こちらとしてはただのヤニ臭いタコ部屋みたいなイメージ。みんなが気を遣わなくて、正直でいられる場所であったらいいと思ってて。きれいにしたいんだけど、直ぐにきたなくなっちゃう。いま、新しいきれいなハコがいっぱいできてるじゃない?おしゃれな。うらやましいなあ。
●や、今も昔も十分キレイですよ。まあキレイさの方向にもよりますけど、確かに新しいキレイなハコも多く出来ていますよね。
でも、そこは憧れてるくらいがちょどいい。あとね、当日の出演者以外にもたくさんの人がふらっとフラットにあそびに来るので、偶然から出来事が生まれることが結構あるかも。イベントになったり、飲み仲間になったり。結ばれたり。楽屋ももう一つの店みたいなかんじかなあ。売り物は9V電池しかないけど。
●(笑)…ずっと考えていたのですが、GARAGEスタッフの皆さんの事を紹介していただけますか?個人的には、外部から来るお客さんに、多くのアーティストが出演する場所で働くスタッフさんの事を紹介する機会もあって良いのではないか?と思うので。

PHOTO: PAブース。リハーサルの様子。
うちのスタッフはぼくがいうのもなんですが、とっても個性的。人と干渉しあうのが大好き。それがプライベートなとこまでいっちゃうから知り合った人たちとは家族的なつきあいもさせてもらってます。でも、出入りしている人にとっては鬱陶しいときもあるだろうね(笑)。音楽はもちろんすきで、ミュージシャンとして活躍している人も暗躍してる人もいます。なにかやりてー、って常に思ってるかな。みんな。ルーチンのできない不合理的な職場です。業務もやりたいことをとりあえずやってみようっていう風潮があるからフレッシュな頭で仕事に挑める環境かなあ。スタッフのキャラクタは各種取りそろえていて、それぞれに簡単にヘッドコピーをつけれるような逞しい人たちがそろってる。そういう人が集まってるってことは、トップの社長が面白い人間なんでしょうね。

PHOTO: スタッフのみなさん、本当におつかれさまでした
●ちなみに、スタッフ同士、普段一緒に遊んだりします?
スタッフがミュージシャンとしてイベントに参加する際に便乗して飲みに行くことが多いです。で、お客さんより酔っぱらって騒いでしまうところは僕らの正に品がないところです。
●それでは、出口さんとGARAGEが現在おすすめする注目のアーティストがいましたら、詳しく教えていただけますでしょうか?
ペトロールズっていうグループがいます。彼らの正直な音楽との向き合い方は大好き。楽曲や歌詞、アレンジなどのクオリティはもちろんなんだけど、姿勢が活動にあふれ出ちゃってるところも他のグループにはない独創性を感じます。最近、枠に当て込んでいくことが親切や合理性だとおもわれてる状況ってあるじゃない。そこをサラッとブチ壊してるところがかっこいい。音楽に実直な彼らは特に意識はしてないんだろうけど。そして、CDや物のリリースもコンセプトが明確で魅力的。それらは途中にお金が発生するから商品ではあるんだけど、その商売さえも表現に掻き消されてる。常に作品なんだよな。アーティストにとってあたりまえな在り方なのかもしれないけど、そこにぼくらの考える音楽の過去と未来を感じます。
●今後のGARAGEのさらなる目標や、これから打ち立てて行くコンセプトなどがありましたら教えていただけますか?スタッフの皆さん自身がイベントを行ったりする予定はありますか?これからだと年末のカウントダウンなども楽しみですが。
ライブハウスを再定義したい。アーティストが音楽を表現して、そして人がいるって単純に素敵じゃない?音楽ってさ、受け手の想像があってそれでようやく完成するってゆうかみんなのものになるでしょう、だからどちらが中心かなんて考える必要はないと思うし、漠然となんだけどそこに人々がいるから音楽がある、ってそうゆう場をつくりたいとおもってるの。一方的じゃない感じね。

PHOTO: 『Art Yard informer × 下北沢GARAGE』のスタート時にステージより撮影
●僕も『再定義』は欲求としてありますね。ライブハウスの再定義、情報伝達・雑誌の再定義、パフォーマンスの再定義…。いろいろですが、今はなんか『遺伝子組み換え後』、って感じがするんですよね。それが当たり前みたいになってる。Art Yardみたいな雑誌にしても、単に自然な想像力のレンジを広げたいというか。それが本来のDNAかな、と。だから、答えの一つとして、自然ではないアーティストは表紙に登場しないんですよ。ただ、一方的じゃないのは本当に重要ですね。
あとね、いまの音楽の何割かってお金の流れの構造の歪みでなんだか巻き込まれてるでしょう、それで悲しくなることがあって。でも、それ以外の方法を持ち合わせていなかった我々の方がもっと悲しいわけで。瞬間的な評価を伴わないと音楽の価値がなくなるなんてことはないわけだし、作品に商売上の時間を持ちこまなくたっていい。アーティストがいて人がいて、って環境を追求したら、もっと楽しくなるとおもうし、音楽を伝える為の無意味なコマーシャルを排除できる気がする。音楽を商売の速度ではなく、人の速度に戻したい。そしたら音楽がようやく文化になるんだとおもう。てっとり早い娯楽的な音楽も好きだけどね。
年末は盛り上げたい。今年は15周年だし。初めてのことをやりたい。思春期だしね。これから成熟するためにも経験したいことがたくさんあります。で、それらは準備が整い次第WEBやらなんやらでお伝えしていきます!
●楽しみですね。今回は『ArtYardinformer×下北沢GARAGE』ということで、バンドやアート作家、そしてリスナー達が集まった誌面連動イベントですが、本日(2009.10.25 日曜日)GARAGEに来場されている方に一言お願いします。
Art Yardとイベントができるってことでとってもドキドキしています。てゆうのもArtYardからはいつも愛情や尊敬や柔軟な感性、そして場所を感じるからです。そこに集まっている豊かな方々がイベントを通じてGARAGEという場所と反応するのは、何かが生まれる前兆なんです。是非とも自由に感じるまま過ごしてくださいませ。
●では、最後になりましたが、ArtYardinformerの読者、そしてこれからGARAGEを訪れるであろう多くのアーティストたちに向けてメッセージをお願いいたします。
みなさんのこれからの音楽をこの場所で作りたいと思っています。是非ともいらしてくださいませ。
Interview & Photo 滝本晴雄
そして、対談後日に開催されたダブルネームイベント『Art Yard informer×下北沢GARAGE』の様子はこちら










