アルバム『BUTTER』のリリースを控え、そして最高のレーベルであるWarpでその才能を発揮するグラスゴー出身のHudson Mohawke。幕張メッセで行われるエレクトラグライドを前に、彼の音楽的バイオを交え、さまざまな思いを語ってもらった。特に彼自身の音楽生活や意欲的な活動ビジョンについて多く語ってくれていることは、いち音楽ファンとしてとても喜ばしいことだ。アルバム・リリースに期待の集まる、Hudson MohawkeがArt Yard informer に初登場。今月、幕張メッセにて本物の音楽ファンに向けて強烈な旋風を起こすであろう、Warp20 エレクトラグライド前の貴重なインタビューとなった。写真提供:Beatink
●あなたの幼少時代について少し教えてください。どこで育ち、どういったいきさつで音楽に関わるようになったのですか?
僕はスコットランドにあるグラスゴーという町で育ったんだ。きっかけとしては、僕が生まれたころ、僕の父親がグラスゴーでラジオの番組をやっていたことかな。父親はカリフォルニア出身なんだけどスコットランドでラジオ番組を持っていて、アメリカの音楽を流していた。だから家にはいつもレコードがあった。[家にあったレコードは]特に変わったものではなかったけど、アメリカのポップミュージックや、ファンク、ソウル、R&Bなどがたくさんあった。それが僕に最初から大きな影響を与えていたね。そして、僕が8歳くらいのとき、Hi-Fiのターンテーブルとカセットデッキを1台ずつ持っていたんだけど、父親の影響から、その2つでミックスをしようとしていたんだ。ピッチコントロールを使ったりといった、ちゃんとしたミックスの仕方なんてできなかったんだけど、ただ単に、僕がグラスゴーで買っていたポップミュージックのカセットとかをミックスしていた。それが初期の頃で、そんなことを何年かやっていたよ。そして、11歳か12歳のときに初めて自分のターンテーブルを手に入れた。当時僕はDJバトルやDMCにとてもはまっていたんだけど、実際のイベントには行ったことがなかった。クラブにも行ったことがなくて、ただ[DJバトルやDMCの]ビデオを持っていたんだ。だからビデオを見ながら、ターンテーブリストたちの芸術形式を勉強していた。初めて自分のターンテーブルを手に入れた僕は、ターンテーブリストたちのスタイルに没頭し、自分でもDJバトルに参加するようになった。ちょうどそれと同じ時期に、プレイステーションから「MUSIC」というゲームが発売された。「MUSIC」は、自分で音楽が作れる、言わば、簡単なシーケンサーのようなものだった。昔のアタリのゲーム機みたいなところもあったね。僕はそのプレイステーションのソフトを使って初めて自分でトラックを作ったんだ。12歳くらいのときかな。かなりシンプルなものだったけど、一通りのトラックは作れたよ。
それから、「MUSIC」に続いて発売されたのが「MUSIC 2000」で、それは2000年―僕が14歳の時―に発売された。「MUSIC 2000」にはサンプラーが内蔵されていて、プレイステーションからディスクを取り出して、音楽のCDを入れ、そこから音楽をサンプリングすることができたんだ。僕はそのプレイステーションのゲームからサンプリングを学んだんだ。それと同時にDJバトルもまだ続けていて、優勝も何度かした。やがて、僕が17歳くらいになった頃、それにも飽きてきて、音楽制作をメインにやるようになった。それで今に至るって感じかな。
●初期に影響を受けたものとしては何がありましたか?
一番最初に影響を受けたのは、とにかく大量のくだらないポップミュージックだよ。けど、その後は色々なドラムンべースやジャングルにすごくはまっていた―GrooveriderやLTJ Bukem、Reikiなど、当時では有名なドラムンべースやジャングルの人たちだよ。あとは当時のレイブとかハードコアのDJの音楽。そういった音楽が初期の影響だね。その後は、ヒップホップにすごくはまった。ヒップホップの方により熱中するようになったんだ。ヒップホップの初期の影響としては、やっぱり、90年代のヒップホップの大御所―DJ PremiereやPete Rock、コマーシャルなものではTimbaland、それからもう少し後だとJust Blazeなどだね。でも、僕に大きな影響を与えたのはヒップホップ黄金期と言える、90年代のヒップホッププロデューサーたちだよ。
●(他のメディアと比べて)音楽のどのようなところが好きですか?
全てだよ(笑)。自分で全てやれるところが好きだね。何をするにしても、僕は自分一人でやるのが好きなんだ。確かにコラボレーションもやったりするけど、基本的にはクリエイティブでありながらソロで仕事をするのが好きなんだ。あとは、ただ単に、僕は常に音楽に魅了されてきたんだ。音楽やある特定の音を聴くときに感じる、しびれるような感覚は、僕にとっては他の芸術形式では経験できないものなんだ。それに、音楽というものには「自分がやるべきものなんだ」という確信がなんとなく感じられるんだ。
●では、あなたの典型的な一日はどのようなものか教えてください。
最近は、毎日が目まぐるしく違うよ。最近、僕の生活には、日常活動というものが全くなくて、実は結構大変なんだ。最近になって全てが変わったんだけどね。以前は、さっきも話したけど、音楽に没頭していた。僕は長い間、バーテンダーとして夜間、働いていた。だから、朝起きてからは、一日中音楽制作をして、夜はバーで働く。夜、帰宅すると、再び音楽制作を夜通しやった。その繰り返しだった。でも最近は、音楽を仕事としてやれるようになったから、生活に変化が多くなった。[グラスゴーに]いないことが増え、他の国にいることが多くなった。毎朝、違う場所で目が覚めるというのは、結構変な感じだよ。日常生活というものがないんだ。でも、全て楽しんでいるよ。自分がやりたい事で、これ以上のことはないからね。だから最近の典型的な一日としては、別のところで目が覚めて、インタビューやプロモーション関係の仕事を多くこなしている。でも、理想としては、一日中音楽を作っていたいな。あと、「ザ・シンプソンズ」(=アメリカのテレビ番組)を見たりとか(笑)。
●近日発売のアルバム「BUTTER」について教えてください。
このアルバムの制作には結構時間がかかったんだ。なぜかと言うと、僕はとても長い間WARPというレーベルのファンだったから、WARPとアルバム契約を結んだとき、WARPと一緒に仕事ができるということに非常に圧倒されてしまったんだ。だから、実際に契約を結んだ後も、しばらく何もしないという時間を長い間過ごした。WARPの為に仕事をするというアイディアにビビってたんだ。ようやく、アルバム制作に取り掛かったけど、結局全部で1年近くかかったね。僕が影響を受けたもの全てや、好きな要素すべてを一つのパッケージにしてまとめたかった。また、過去の作品や、今まで試行錯誤して作り上げてきた自分のスタイルを取り上げて、それらを一つ上のレベルに持って行きたかった。つまり、もう少し歌に重点をおいて身近に感じられるようにし、もう少しポップに影響されたような感じにしたかった。そういった様々な要素を一つのアルバムにまとめたかったんだ。
●ライブ演奏ではどのようなセットアップで行っていますか?どのような機材を使っていますか?また、それは毎回同じものですか?
自宅では、ベーシックなセットアップだよ。「FRUITY LOOPS」というプログラムを使っているんだ。かなりベーシックなプログラムで、プロ仕様のプログラムとしてはあまり扱われていないけど、簡単に、素早くトラックなどが作れるから、僕がよく使うものの中では気に入っている。それに使い方を知っていれば、複雑な操作もできるんだ。それが基本的な自宅でのセットアップで、それにキーボードとシンセサイザーがいくつかある。かなりベーシックだよ。ライブ演奏のときは、実は最近セットアップが変わってきていて、以前は長い間、単に僕自身と、ラップトップPCと、いくつかのコントローラーというセットアップだったんだけど、これからは、もう少し、ライブっぽさを出そうとしているところなんだ。新しいビジュアルも制作しているところだし、光を使ったショーも作っている。それから、もっとステージの存在感を出すために、ヴォーカリストや、ダンサーなんかを入れようかと考えている。まだ、模索中で今の段階では考えをまとめているところだけどね。でもライブは毎回違うものだよ。全く同じライブなんてない。多くの場合、大体同じ曲を使うけど、その中でも何か別の要素を入れたり、あるいは、取り出したりしてるから、全く同じライブというものは絶対にないんだ。クラウドの様子やライブの流れによって、内容を変えて行くのが好きなんだ。
●音楽以外からで、何か影響を受けるものがありましたら教えてください。
僕が大きな影響を受けているのは、自分が生まれ育った町、グラスゴーからだね。とても良いクラブイベントがいくつかあるし、特にクラウドの態度がとてもオープンで、新しい音楽や芸術形式に寛容なんだ。世界的に大成功を収めたバンドやDJの多くがグラスゴーの出身なんだよ。Franz FerdinandやMogwaiはグラスゴー出身だし、有名なテクノのDJにもグラスゴー出身の人はたくさんいる。世界的には、メジャー音楽の街としては認められていないから、人々の音楽に対する態度がオープンで、ポピュラーになりすぎなかったんだよね。常に、独自のシーンがあって、それが常に進化したり、育まれてきたりした。だからグラスゴーの人たちはユニークで、音楽に対して非常にオープンで、新しい音楽に寛容なんだ。それに、最近のクラブでは珍しいことだと思うんだけど、パーティで派手に盛り上がるのも大好きだしね。最近は、立ったままの態度、クールにしすぎている態度が多いと思うんだ。グラスゴーの人たちは、盛り上がったり、好き勝手に騒ぐということに抵抗を感じないんだ。そういった自由な人たちや音楽環境が、僕に大きな影響を与えているよ。
音楽以外の影響といったら、他にあまりないな。僕は今までずっと音楽だけに魅了されてきたから、他に趣味といったものがあまりないんだ。他に興味あることといったら、レゴで遊ぶことくらいかな。実際、レゴのピースの音をサンプリングしたこともあるよ。レゴは僕のもう一つの趣味だね。あとはテレビゲームをするとか。
●日本のポップカルチャーやポップミュージックについては何か知っていますか?
本当はもっと知りたいけど、全然知らないんだ。日本には一度だけ行ったことがあるけど、一週間もいなかった。だからもっと日本で時間を過ごしたいね。日本に友達はいるよ。実際、アルバムにフィーチャリングされている友達がいるんだ。Nadsroicという名前の女の子で、実は日本の小学校の先生なんだ。ヴォーカリストの一人としてアルバムにフィーチャーされているよ。今は鹿児島で先生をやっているけど。
●では、近日の予定を教えてください。
近日の予定としては、メジャーなR&Bやポップアーティストのゲストプロダクションをやりたいと思っている。そういった方面に進出したいんだ。それから自分のレコード制作もしている最中だよ。あと、カルフォルニアのレーベル、Stones Throwのプロジェクトも抱えている。とにかく自分の仕事の幅を広げて、いろいろなシーンで、いろいろな人と仕事をしていきたいと思っている。なるべく幅広い分野で仕事ができるようになればいいと思っているね。
●現在もグラスゴーを拠点としているのですか?
数か月前まではグラスゴーを拠点としていたんだけど、今はロンドンが拠点になっているんだ。でも、ロンドンとグラスゴーは4時間しか離れていないから、よくグラスゴーに帰っているよ。
●やっぱりグラスゴーが好きなんですね?
うん、とても。この先も、やっぱりグラスゴーが僕にとって一番好きな場所であり続けると思うよ。ホームタウンだからね。
●今年はWARPの20周年記念です。WARPと仕事をしてきた感想を聞かせてください。また、あなたにとってこの20周年記念とはどのような意味がありますか?
WARPは一緒に仕事をするには素晴らしいレーベルだよ。とても大きなレーベルなのに、仕事の仕方がグラスルーツ的で地に足がついているところがとても気に入っているね。だからかなりスケールの大きいプロジェクトを手掛けていても、いつでも僕の方からレーベルを立ち上げた人にすぐ電話をかけることができる。組織が大き過ぎて、自分の手の届かないところにいる人というものがいないんだ。レーベルの人たちと常に面と向かって仕事ができるんだよ。だから僕はWARPがとても気に入っている。それから、僕が今、音楽をWARPからリリースするということは、実際僕にとって、タイミングの良い、ラッキーなことだと思うんだ。20周年ということで、通常以上の露出があるからね。だから、自分がこの時期にデビューするというのは、僕にとっても大きな助けになっているよ。とにかく、WARPのような最高なレーベルと関わることができるということ自体、僕にとっては大きな喜びだね。
●この質問はArt Yardでインタビューする人全員に聞いています:世界で最も美しいものは何でしょうか?また醜いものは?
世界で最も美しいものは、たぶん何らかの音だろうね。ヴィジュアルを説明することはできないけど、僕にとって世界で美しいものは、ある特定の音やメロディ、音楽を聴いたときに感じる気分だと思う。世界で最も醜いものは、うーん、何かな。わからない、Fuck、絶対何かいい答えがありそうなのに!
●少し考えてもらって結構ですよ。
うん、何か思いつくよ。父親の足の爪とかかな。ごめん、ちょっとグロいよね。
●では最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。(読者の多くは若いアーティストやミュージシャンです)
僕からのメッセージとしては、「日本にまた行くのをとても楽しみにしています。」以前の日本での経験や日本で出会った人たちは、僕にとってまったく新しいものだったから、また日本に行ってプレイするのが心から楽しみなんだ。それから、アーティストたちへのメッセージとしては、これはちょっとありふれたメッセージかもしれないけど、「何かやりたいと心に決めたことがあるなら、とにかくそれをやる、という以外の選択肢はないということ。」僕は今までそれができてきて、ある意味、とてもラッキーだと思うけど、僕は常に頭の中に自分が何をやりたいのかというイメージを明確に描かいてきた。それで、それに向けて今までやってきて、それが上手くいったんだ。だから、僕のメッセージは、「頭の中にやりたいことがあったり、何かを計画しているのであれば、どんなことがあってもあきらめないで、やり遂げなければいけない」ということ。やりたいと思ったことは、何でもできるんだ。僕が、自分の人生で今やれていることや、最近の数々の貴重な体験は、一年前だったら想像もついていなかったものだから。かなりありふれたメッセージだけど、とにかくあきらめないで希望を持ち続けること。
●アルバム「BUTTER」について、もう少し聞きたいのですが、制作に取り掛かるまで1年かかったということですか?それとも制作に1年かかったということですか?
そう、全てを作るのに1年くらいかかったということだよ。常にとりかかっていたというわけではないんだけど。全部で1年くらいかかった。作る前は色々考えをまとめたりしていたんだけど、それ以前にとにかくビビってた。長いこと心配ばかりしていて、何もしていない時間が多かった。アルバムなんて全くできないんじゃないか、って思ったこともあるよ。でも幸運なことに、結局、やるべきことを信じてとにかくやった。他の事は気にしないで、とにかく制作に打ち込んだんだ。
●ありがとうございました。エレグラでのパフォーマンスを楽しみにしています。
どうもありがとう。










