※Art Yard informer5周年記念にメッセージビデオを頂いてます。インタビュー文末から視聴可能。(ピー音満載)
●よろしくお願いいたします。Art Yardは学生の読者も多いのではじめにお聞きしたいのですが、掟さんはどのような学生時代を過ごされていましたか?ロマンポルシェ。の活動に繋がるような活動はその頃からされていたのでしょうか?
掟ポルシェ(以下掟) : ちょうど中学、高校時代を過ごしたのが北海道の留萌というところで、札幌から北に140km程行ったところにある漁師町なんですよ。で、まあ・・・今と違って情報は非常に遮断されていて、「雑誌に書いてある事が東京で行われている事の全て」みたいな勘違いがどこの地方にもあったと思うんですよ。自分のところの地元は音楽が非常に盛んでして。その当時、全国を縦断するYAMAHAの『EAST WEST』というコンテストとか、素人のバンドの発掘コンテストみたいなのもあったんですけど、そういうところや学園祭に出てくるバンドは、当時普通ならBOΦWYやレベッカのコピーバンドだったりするんですけど、うちの地域だけおかしくて、そういう学園祭とかコンテストに出るバンドの9割がハードコア・パンクだったんですよ。しかもオリジナルで自分たちで曲作ってるっていう、そういうのが当たり前になっていて。クラスの半数ぐらいが『宝島』とか『DOLL』とかを主に読んでいて、どうも誤解していたみたいなんですね。「『宝島』と『DOLL』に書いてあることが今東京で行われていることのすべて」みたいな。普通は9割がBOΦWY のコピーとかをやっていて、1割が変な事をしてる、って感じじゃないですか?それが9割方がハードコア・パンクっていう異常事態で。
●逆だったんですね(笑)
掟 : ええ。80年代初頭のハードコアは暴力とワンセットでしたから、出てくるバンドのほとんどがスタッズを打った革ジャンを着て、チェーンとか振り回して会場を破壊しにかかる、みたいな(笑)。で、自分はハードコア・パンクのバンドを組んでるわけでもなく。ニュー・ウェーブとかを聴いていたんで、そんな音楽をやりたい人がいないからバンドすら組めない、っていう。
●では聴いていた音楽自体はどこから影響を受けたんですか?
掟 :うちの六歳上の兄貴が買っていたレコードとかを最初は聴いてました。俺が小学校六年生くらいの時は兄貴は高校三年生。当時流行っていたものはけっこうなんでもやってる人だったんですよ。その当時流行っていたのYMOのコピーバンドと暴走族をどっちも同時にやっていて(笑)。パンチパーマなのにボコーダーに向かって『TOKIO!』ですよ。当時YMOの本が出たんですけど、その中に書いてあった坂本龍一おすすめレコードを兄貴が買って来て聴いてたんですよ。それがウルトラヴォックスのJohn Foxxのソロアルバムだったり、THROBBING GRISTLEというノイズ・ユニットだったり。兄貴が聴いていたものの中から、さらに自分に引っかかったものを聴いていたんですよね。だからそこが多分、ルーツになっていたんだと思います。自分が今ロマンポルシェ。でやっている事のスタイルは、ある意味兄の影響をゴッチャに受けていると思います。白い長ランを着て、おっかない顔で説教をしながら、でも曲はニュー・ウェーブという。兄貴のヤンキー面と文化的な面の両方をないまぜにして引き継いで(笑)。
●なるほど(笑)。それも学生のころから積み重なっていったものだったんですね。
掟 : やっぱり、何もしなくてもカッコよくてモテたり、勉強ができたりだとか、そういうのが無かったらメインじゃない方を選びますよね。意図的にサブカルチャーのようなものが自分の中の基本線になっていったというか。あとは、兄貴が通販で定期購読してた雑誌に、『ビックリハウス』っていうパルコ出版から出ていた本(70年代~80年代中期にかけて発行されていたサブカルチャー雑誌)があるんですけども、その本の中に出てくるバンドを聴いたりとか。読者が投稿するネタハガキみたいなコーナーなんかもあって、ラジオの深夜放送の雑誌版みたいな感じだったんですよ。さすがに小学生だったんで、投稿したことはなかったんですけどね。そういったものも自分の趣味嗜好の元にはなってるんでしょうね。
●『説教』のスタイルっていうのはどのあたりから始められたんですか?
掟 :ちょうど97年からバンドを始めてるんですよ。で、当時世の中はどういう感じだったかっていうと、『新世紀エヴァンゲリオン』がブームになっていまして。そしてもう一方では梶原一騎先生(あしたのジョー、タイガーマスクなどで知られる原作者)の再評価などがあって、精神的なバランスをとるためにどちらも読んだりして。『エヴァンゲリオン』的な価値観がニュー・ウェーブだとすると、それをそのまま音楽的に再構成してやっちゃうと、軟弱だと思ってナメた態度で接してくる奴もいるだろうなと。自己陶酔的なものをまんまスカした顔でやるのは、性に合わない部分もあるし。で、曲が軟弱指向だから、バランスをとるために、曲の合間に軟弱でない梶原一騎的な思想に基づくパフォーマンスを入れて、怖い顔してればナメられないで済むんじゃないか、っていうのがあったりして。例えば『エヴァンゲリオン』では「僕はここにいてもいいのかな・・・」的な軟弱なことをグチグチ言ってるじゃないですか?(笑)自分の存在意義だとか存在理由だとかについて思い悩んでいる。で、方や梶原一騎先生は、己の存在理由に対してシンプルすぎるほどの回答を出してくれているわけですよ。「男ってのはなぁ・・・」と(笑)。『エヴァンゲリオン』的なものを求めている人たちにとっても最終的な回答になりうるし、抜け道というか救いがあるよなぁと。「男はいい車に乗っていい女を抱き、旨い酒を飲んでりゃそれでいいんじゃ!」という、人生の迷いを「男だから」というマチズモで一点突破する梶原先生の思想は正しいなぁ、と。で、ニュー・ウェーブの曲をやる合間に、「男とは何か?」ってのを語るっていうスタイルが出来て・・・まぁ、大体そこ自体が間違っていますけどねぇ(笑)
●(笑)・・・でもオーディエンスにはお説教のウケは良いですよね?
掟 : 最初は「間違ってるのか正しいのかわかんないけど、なんとなく良い事を言っている気がする」ってくらいが説教の着地点だったんですけど、最近はもっと分かりやすくしようと思って。率直に「・・・これは明らかに間違ってる!」と思われるようにしてます。間違ってることを堂々と言い張るのも男らしさだと思っているので。
●それでは質問を変えて、4月にロマンポルシェ。のニュー・アルバム『盗んだバイクで天城越え』がリリースされますが、過去の作品からの変化について教えていただけますか?
掟 : 違いは色々とありますけど、まずひとつは機材が変わった事。なぜなら、1年半前に家が火事になって機材が全部焼けちゃったから。それまではアナログシンセサイザーをアナログミキサーを使ってリアルタイムに操作してたんですけど、仕方なくパソコンベースに移行するしかない。ソフトシンセ化されてるシンセの実機って、中古市場価格が高いシンセが多いんですよ。だから、前よりはもしかしたら音が良くなってるんじゃないかと思います。以前はもっとストレートに、チープに聴こえるように「音を迫力なくしてくれ」とミキサーには言ってたんですけどね。80年代にSigue Sigue Sputnikっていうバンドがいたんですけど、彼らをひとつの手本にしていて。ロックなんだけど低音や重さがほとんどなくて、想像を絶するほどチャカポコしてるっていう。それって逆にこう・・・ロックから重さを取ることによって、ビックリする人もいるかな、と。ロックなのにカッコよさの基礎になっている重さを排除してしまうのは潔いし、勇気がいるなと。だからこそ、聴いた人にショックを与えられるかなぁと。まあ、当初は低音をホントに入れないで、ちっちゃ~な音でやってたんですけど、ライブになるとさすがに寂しくなるんで(笑)
●ちょっと音の隙間が・・・(笑)
掟 : いや、もうスッカスカでね(笑)。レコーディングの時に「すみません、低音出してください」って言ったら「元から入ってません!」ってミキサーの人に怒られたりして。「じゃあチョット入れようかな・・」とようやく思い出したっていう。最近は低音も結構はいってますけど、元々あんまり迫力のある、低音が豊かな音楽が好きじゃないんですよ。
●ニュー・ウェーブ時代の音楽って、たしかにあまり低音のイメージってないですよね。
掟 : まあその時代は、低音を極端に入れるバンドと、極端に削るバンドばかりですよね、多分。「ロックのかっこよさとは違う完成度」を求める上での方法論っていうか。
●なるほど。
掟 : あと、ロックフェスとか本当に良くないと思うんですよね(唐突に)。ああいうのは全部潰したほうがいいですよね。若い子はロックフェスに出ているバンドしか聴かなくなってるでしょ。そして、ロックフェスにでているバンドだけが売れて行く。でもね、テレビで音楽チャンネルとかを見てて、不思議な気持ちになるんですよ。「なんでこんなにロックしかないんだろう?」って。世の中に山ほど色んなバンドや音楽があるのに、なんで「普通のカッコいいロックバンド」しか出てこないかな、って。頭にきて仕方ないというか。ロックが刺激的だった時代はとうの昔に終わっていて、今のロックには目新しさも何もないじゃないですか。ロック以外のことをやっている人たちが、昔より実は出てきづらくなってるんじゃないかな?という気がしていて。これは良くないなぁ、と。ロックフェスの出演バンドの選定をしてるやつがまず悪い!(笑)。
●でも、掟さんと関わりの深いPerfumeも結構、毎年フェスにでていますよね?(笑)
掟 : だからああいうものを出せばいいんですよ!もっと!
●そうですね。もっと混ぜてほしいですよね(笑)
掟 : そう、もっと混ぜないと!例えばロックフェスというからにはロックが出てくるんでしょうけども、でもそうじゃない音楽にも「ロック・スピリット」はあるわけじゃないですか?「ロックとは何か?」というのを考えたら、アイドルとかデスメタルだとかも均等に出てないとおかしいと思う。
●ロックというのはスピリットというかマインドの部分だ、と。
掟 : そうですよ。ロックの本来の姿とは、刺激であるべきであって。内田裕也先生の言うところの「ロックンロール」が本当の「ロック」なんですよね。ギターウルフのロッケンロー!も同じです。ロックとは常に刺激的なものであろうという心意気であって、音楽性がどうのなんて一切関係ないですよ。だからもう、いまあるロックフェスはね、ホントに一回全部やめましょう。ロックフェスじゃないフェス、ロックじゃないフェスをやればいいですよね。
●それいいですね。『ロックじゃないフェス』(笑)
掟 : 友達が『ロックじゃないフェス』をね、数年前までやってたんですけど、不景気でやめちゃいましてね(笑)。RAWLIFEってイベントなんですけど。ロックフェスに出ない人しか出演しないイベントをやっていて素晴らしかった。出演しているのもSTRUGGLE FOR PRIDEみたいな振りきれたハードコアとかね、極端なものしか出ないっていう。会場はそのときによって違ったんですけど、最後は千葉の廃工場みたいなとこでやったらしく。たぶんそこの廃工場の中の霊がみんな憑いて来ちゃったんでしょうね(笑)・・・それで多分・・・。
●あああ・・・(笑)
掟 : 因縁深い場所に引っ張られちゃったかなぁと。でもまあ、『ロックじゃないフェス』は存在しなきゃダメだと思いますよ。そして今行われているロックフェスも、是非音ロックじゃない人たちをもっと出すべきだ、と思いますけどね。ロック、流行り過ぎですよ! ちょっとバランス取ったほうがいい。もうね、ロックバンド自体を法律で禁止した方がいいんじゃないかとすら思いますよ。あるいはロックを名乗るには内田裕也先生の許可が要るとか。
●(笑)では、話題を変えて。昨年から田代まさしさんとツアーをされていますが、きっかけは何だったのですか?
掟 : きっかけは、田代さんがいろんな仕事しなきゃ食ってけなくて・・・それでですね・・・(と、おもむろにArt Yardインタビュアーにお茶を注ぐ掟ポルシェ氏)
●(笑)・・・ありがとうございます、恐縮です
掟 : それでですね、携帯の着ボイスのダウンロード・コンテストみたいなのに参加したんですよ。で、着ボイスが・・・(スタッフ全員に茶を注ぎ始める掟氏)・・・ダウンロード・チャートの10位以内に入ったら、ご褒美としてCDを出してあげる、っていう事だったらしいんですよ。その結果、一位オードリー、二位はんにゃ、三位が田代まさし、ということで、じゃあご褒美にCD出しましょう、っていう。でもオードリーとかはんにゃはそういう携帯の着ボイスのサイトからじゃなくても、メジャーなところでいくらでもCD出せるじゃないですか?結果的に田代さんしか出さなかった(笑)。で、田代さんの着ボイスをそのままCDにする訳にもいかないんで、曲にしようと。で、田代さんのマネージメントをしている方がたまたま1番最初に思いついたのが俺だったんですって。もともと事件の前から田代さんのことは大好きだったので、ふたつ返事で話を受けました。田代さんの出てるコントやCMを自分で編集したビデオがうちにあるくらいです。常にいっぱいいっぱいで強迫観念にかられている所も含めて、自分に近いものを感じるというか。
●田代さんとはCDショップも回られていますか?
掟 : それがCDショップ、イベントやらせてくれないんですよ~。
●でもこの前インストアを・・・
掟 : インストアイベント、下北沢ディスクユニオン一軒だけで、あれ以外は99%以上断られました。ディスクユニオンはたまたま友達が居たんで。でも他のところは「田代さんはダメ」っていう。元犯罪者だからという道義的な理由で。そんなこと言ったらねぇ、誰だって出来ませんよ。◯◯◯◯とか。
●そうですよね~。◯ッ◯ー・・・。CD出せないですよね。
掟 : そうです、そうです。ねぇ?三年半刑務所で刑期を務めているわけですから、そういう人に対して社会はもう少し優しくしてあげてほしいなと思いますけどね。「越谷のデパートでイベントやりましょう」なんて言われて行ったら、やっぱりデパートの上層部からダメ出しが出たりとか。CDを出す会社もインディーズで、これが初めてのCDリリースですから力もない。いま、田代さんとマーシー☆ポルシェで全国のクラブを深夜帯に回ってるんですけど、単なる手売りツアーなんですよ、これ。通常のCD販売店に枚数あんまり置いてもらえないし。まぁ、初回ロット売り切るまでは頑張りますよ(笑)。
●ところで、掟さんがコラボレーションしたり、単純に会ってみたい方っていますか?
掟 :さかなクンには会ってみたいですね。あ、さかなクンは♪鳥くんと二人で営業を回ってるんです(笑)。鳥のこと何でも知ってる♪鳥くん。さかなと鳥に一度で詳しくなれるっていう(笑)。一緒に仕事したことのある人は、「すごくいい人だ」ってみんないいますね。こういう仕事をしていると、あんまり悪い人には会わないもんだなぁ、売れてる人で悪い人ってそんなにいないもんだなぁって思いますよ。今、スペースシャワーという音楽チャンネルで番組をやっていまして、ゲストは大体いい人ですね。九割五分はいい人、あとの一握りは自分がうまく絡めなくて困ったな、みたいな人(笑)。
●掟さんでもそんな事あるんですか?(笑)
掟 : 自分の場合はどちらかというと、こう・・・向こうの話を無視して話を進めないといけないパターンですから。それでも、向こうの方が自分より遥かに無視して進めていく人もいますから(笑)一緒にやってて「やっぱすごいな~」と思ったのは、T.M.Revolutionの西川貴教さんとか、やっぱり話の転がし方とか抜群に上手いですよ。ほっといてもちゃんと面白い話にもっていってくれる、みたいな。ケミストリーやゆずがとても気さくで腰が低かったりとか。人間と人間だから、会ってみないとわかりませんよね。あと、想像通り過ぎて驚いたのは河村隆一さんですね。皆が思ってる河村隆一像のまま、というか。ボケてるところにツッこみを入れても、言ってることがボケてるってわかってないからリアクションも帰ってこないっていう(笑)。さすがは河村隆一だと思いました。

●(笑)あっ、ところで掟さんはアイドルファンとしても知られていますよね。それに、Perfumeをインディーズの頃からずっと応援されていたり、そんな掟さんにとって広い意味でアイドル、というのはどういった存在でしょうか?
掟 : 「アイドル」って、一般的には90年代以降はオタクが好きになるもので、「オタクが好きになるものはダメなもの」というか・・・今の日本はクラスの中のケンカ強いチームが中心になるので、そういったケンカ弱いチームが好きになるものは出来るだけ排除する方向に行きます。コミケに何百万人集まろうとも、世間的には「無かった事」になる、みたいな感じだと思うんですよ。あくまでオタクという村の中での出来事だから。で、「アイドル・カルチャー」っていうのもその一環で、「オタクが好きになるものだからキモチ悪いね」ってところで止まってたと思うんですよ。それがモーニング娘とかが売れて、99年くらいからちょっと変わって来て。で、Perfumeが売れて、さらに変わったんですよ。「アイドルを好きになっても恥ずかしくない」みたいな感じで。今の若い子たちにとっては特にそう。まあ相変わらず地下アイドルしか出てないどよーんとしたヒッドイ所も、パラレルワールド的には存在してるんですけど。でもそういうのは別として、「アイドル」というものを好きになるのが今はそんなに恥ずかしいことじゃなくなってきた。今、AKB48のお客さんが普通に高校生だらけなんですって。アイドルの現場というと、もう自分みたいなアラフォーのオッサンしかいなくて気持ち悪い場所だと思われてたのが、ちょっと違ってきてるのかなぁと。
●なるほど、たしかに「恥ずかしい」というのはないかもしれませんね。
掟 :彼ら高校生にとっては、子供の頃からモーニング娘が普通にテレビに出ていて、でPerfumeなんかも普通にテレビに出ていて。どちらも売れていて、それを聴いている事はなんにも恥ずかしくない、っていう環境で育ってきた。だから、AKB48は前近代的なベタな恋愛詩を歌っているんですけど、その子達にとってはアイドル初体験なわけで。しかも、オタクカルチャーと同義語じゃなくなってきた中で育ってるから、それが「恥ずかしい」なんていう刷り込みがない。俺の中ではそれを「何とかしてアイドルファンとアイドル歌謡の失地回復しよう!」っていうことで頑張ってきたつもりなんですけど、「もう自分の役目も終わったかなぁ」って思う時はありますね。自分が望んだアイドルカルチャーの未来像はそうじゃないので、まだまだがんばらなきゃいけないと、買ってな使命感を持っているんですけど。今、バニラビーンズっていうアイドルと仕事を通じて関わっていて。Perfumeの時と同じように、これからどうやって売っていけば良いか、とか微力ながらネタ出しとかしています。CDが出たらトークショーの司会もやったりとかね。バニラビーンズって80年代のネオアコや渋谷系、90年代のカーディガンズのようなスウェディッシュポップみたいなのを今再構成してネタ元にしてやってる訳ですよ。「アイドルなのに、こんな事をやってる」ってのが面白くて。バニラビーンズの曲でリミックスを2曲やったんですけど、ひとつはDivineとかDead or Aliveとか、※Stock Aitken Waterman(※80年代のプロデュース・チーム。カイリー・ミノーグやバナナラマのプロデュースで知られる)みたいな、ああいうハイ・エナジーな感じの曲調にして。もう1曲は、"James Brown is Dead"のL.A.スタイル(オランダのテクノユニット)みたいなデステクノ風にリミックスにしてみたりとか。で、それはどっちも下品すぎる音楽なので、曲のネタ元に入れ込むとファンの人たちの中には結構拒否反応があったりして。「曲はやんなくていいから」ってよく言われます(笑)。まあそれはもっともだな、と思いますけど。バニラビーンズは現状で音楽的にとても完成度が高いので、なんとかこのままでモノになってくれないかな、といつも考えてはいます。
●そうなんですね(笑)
掟 : 実際アイドルが売れるなんてことは未だに奇跡で、Perfumeが売れるまでは実際ありえないことだったぐらいで。モーニング娘はテレビの人気番組のワンコーナーとしてテレビ主導で始まったことだと思うし、テレビの力があって売れるのもわかるんですけど、Perfumeが売れたことはほんと、奇跡みたいなものですからね。音楽にせよメンバーのキャラクターにせよ、やってることは圧倒的に正しいから、なんとか売る方法がないかな?といろいろやってたんですけど。でも自分たちが助力している時代はぜんぜん売れませんでしたね(笑)。木村カエラさんの一言があれば簡単に売れちゃうっていうね(笑)。あとは、バニラビーンズは「アイドルらしくない」ってところがおもしろい。アイドルの条件として禁じ手だらけなんですね。普通アイドルって15、6歳の女の子がなるものじゃないですか?それがもう普通に二十歳超えてるし、二人とも身長が170cmぐらいあったり。ベタベタなアイドルが好きな人って、そういうの苦手なんですよ。「十代でないと・・・」とか「アイドルは身長低くないと・・・」とか。でもそんなの関係なくて、「アイドルとはアイドル歌謡曲を歌ってる人たちのことだ」っていうことで括っちゃえば、そういう要素は逆に人目に触れたときに、「アイドルなのに◯◯」っていう売り文句の一つとして・・・ひっかかりになっていいんじゃないかと思ってます。バニラビーンズは面白いんですよ、中の人が。身長172cmのリサは、異常な程の大金持ちの娘さんで(笑)。
●異常な程の大金持ちって・・・(笑)
掟 : お嬢様学校に行ってて、ご学友はもっとお金持ってたりするから自分のことは全然金持ちじゃないって言い張るんですけど。新幹線に乗って「おしぼりが出てこないのはなんで?」ってビックリしてたっていう。「それグリーン車だよ~」ってツッコむと、「あの、新幹線、滅多に乗らないんでわからなかったんです! 普段は飛行機移動でっ!」・・・と、話がもっとヒドい事になるという。
●あはは(笑)
掟 : コンビニでほとんど買い物したことないし。よくライブ中のトークでやっているのは、コンビニで売っているものの値段当てクイズ。俺が司会で、「サッポロ一番袋入り、さて幾らでしょうか?」って。「なんですかそれ? サッポロ・・・ってことは・・・ビールですよね?」「んんん~・・・ちがう・・・んじゃないかな?」とか(笑)。で、「ラーメンは1杯1000円くらいだから・・・半分として、500円!あっ、450円!」みたいな。50円差し引いたことで庶民感覚を表そうとしてるんだけど、全然無駄だったっていう。あと、ユニットバスを見てビックリした、とか。ほら、お金持ちだからビジネスホテルとか泊まったことないから(笑)。「みてみてみて、これ見て!お風呂とトイレが一緒!」とか。「Perfumeの"ワンルーム・ディスコ"って聴いた事ある? あのワンルームの中に付いてるのが、大抵コレ」「・・・そうなんですかぁ・・・(感心)」って(笑)。微笑ましいほど浮世離れしてるんですよ。金持ちも度が過ぎると全然嫌味に聞こえなくて面白いですよ~。
●ではアイドル繋がりなんですけど、三宿で行われている『申し訳ないと』というDJイベントには掟さんはどういうきっかけで参加するようになったんですか?
掟 : 主宰しているミッツィー申し訳さんが宇都宮プラネットというクラブのオーナーなんですよ。で、ロマンポルシェ。のツアーのときにプラネットさんにお世話になったりしていて。で、ミッツィーさんと俺と、ライムスターの宇多丸さんと、電撃ネットワークのギュウゾウさんと、m-floの所属事務所ARTIMAGEの社長のGEEさんというメンバーが中心でやってるんですが、「なんでこのメンバーにしたんですか?」って俺もミッツィーさんに聞いた事あるんですよ。『申し訳ないと』はJ-POP限定のイベントなんですけど、色々なミュージシャンやDJに、J-POPだけでDJやってくださいっていうと、フロアライクなものを並べてかけて無難につなげたりするだけで、偏りがなかったりするんですって。でも、俺はアイドルの曲しかかけないし、ギュウゾウさんはロックしかかけない。宇多丸さんもオールジャンルでいろいろかけているんですが・・・なんかこう、そこにもその人独自の偏りがあるっていうか。その偏り具合をたまたまミッツィーさんが見て、他の第一線でやっている本職のDJの人たちと比べても遜色のない人がこの人たちだった、といってましたね。その結果、10年以上も続いているというね。定期的にやってるのは三宿webってクラブで、もう八畳間ふたつくらいのちっちゃいところなんですけど、あそこで毎回すし詰め状態でやってますね。
●でも人気ですし、まだまだ続きそうですよね?
掟 : でも、ミッツィーさんも一回出来上がったものを、こう・・・全て破壊したくなる人なんで。完成形に近づくと急にお達しが下ったりとか。「これから申し訳ナイタズも7人から14人にすることにしました」とか(笑)。
●EX◯LEじゃないですか(笑)
掟 : 「1軍、2軍入れ換えもアリます」みたいな。急にメールがきたりして「ナニッ!?」みたいな(笑)
●あっははは(一同爆笑)
掟 :ホント、面白いんですけどうかうかもしてられないんですよね(笑)。DJイベントへのレギュラー参加も、モーニング娘。ハロプロの曲だけをかける「爆音娘」とか、昔からいろいろやってたんですけども、多くのDJと同じように微動だにせずにやって、お客さんの顔色伺いながら地味~につなげようとしたり、やっぱり曲と曲がつながんなかったりして、単に下手な感じでかけてたんですよ、以前は。でも、2003年に日比谷の野音で、ミッツィーさんと俺で、ORANGE RANGEとかが出ているイベントの転換15分×7回のDJってのをやったんですよ。日曜の昼間から夜にかけてのDJとバンドのイベントだったんですけど、ORANGE RANGEとかが出ているんで、お客さんが中学生の女の子とかだったんですよ。で、中学生だから、もう3000円払ったら払った分だけ楽しみたいわけじゃないですか? だから、バンドとバンドの合間=休憩タイムだという発想はないんですよ。DJも「15分ワンセットで何回もやってくれ」なんてハウスの人なんかは絶対できないから、俺たちが呼ばれたんですけど、そういう客層だから、転換15分の間もお客さんが何となくこっちに期待を持ってみているのがわかるんですよ。で、「何かお客さんを喜ばせるようなことをやらないといけない」という気持ちになって。曲の振り付けとかを無理矢理加えていって、客煽りをずっとやってると、ホントについてくるんですよ。3000人くらいお客さんが入るところなんですけど、最初1割だったこちらの転換DJに反応しているお客さんも、徐々に全員がこっち向いてくる感じになって、本当にそのとき高揚感があったんですね。「ああ、DJって楽しいもんなんだな」って。それからですね、曲のつなぎを一切考えないで、全部カットインで、あとは踊ってゴマかすっていうスタイルが確立したのは。
●ところで、新しいアルバムについてもう少し教えて頂けますか?
掟 : あまりにも普段歌っている曲が下品で、売れる要素が一切ないので、何か売れそうなことを入れ込まないと、アルバムの予算を切れないよと事務所の社長から言われて(笑)。じゃあいっそ歌謡曲のカバーをやろうと。それでイモ欽トリオの『ハイスクール・ララバイ』を歌わなきゃいけないことになりました。拷問みたいなもんですからね・・・四十一歳にもなって「ハイスクール」もクソもねぇだろう・・・って。イモ欽トリオやってた頃既にオッサンだった山口良一だって当時28歳ぐらいなんだから。我ながら目も当てられない地獄のハイスクール感ですよ・・・。
●大丈夫ですよ。「ハイスクール」は、マインドですから(笑)。
掟 : マインドォ・・・??
一同笑
掟 : マインドだったら余計違うんじゃない?(笑)。で、一緒にバニラビーンズにもコーラスで入ってもらっているので。あの子たちも、アイドルなのに二十いくつだし(笑)。大人がこう、死ぬ気でハイスクール感を出しているところとかですね、そういうところを楽しみにしてもらえたらと思います。他にもくだらない歌が山ほど入ってますんで。自分のバンドの曲はね、「俺は良い!と思ってるけど、お前らには薦めない」ってのが基本です。自分のバンドの曲はね、自分は本っ当に大好きなんですけど、なかなかそれがこう、どこがよくてやってるのか理解されないんで。人にはお薦めしない(笑)。引っかかる奴だけ勝手についてこいっていうね。でもそうすると、ナメてかかってくるやつもいましてね。ロマンポルシェ。の10周年記念イベントとかでも、「別に曲とか聴かなくってもいいでしょ!?」みたいな事を本気で言われると、意外と本気でカチーンとくるんですよ(笑)。かといって、非常にバカバカしい曲をやってるんで、ある意味もっともだなとも思うんですけどね。今回もヒドい曲がいっぱい入ってますね。『男は薄着』とか。何も伝えない、何も心を揺さぶらない。でも呆れるほどのくだらなさなら世界一です。
●・・・川はもう渡らないんですか?
(急にキレて)渡るかそんなもん! だってね、泳ぎは本当に不得意ですもん! しかもあの川を渡るロケやってた頃って水温4度くらいですよ。もう少しで氷がはる温度! ウェット・スーツとか用意してもらって着てるシーンもありますけど、体のサイズに合わないブッカブカのがきて、首から水が入ってきちゃって。冷たいし浮かばないしで最悪でしたね。もう川は渡らないです。最終回の時に大事マンブラザースと一緒に言ってますからね、「橋が一番大事」って(笑)。
●あはは(笑)なるほど。では掟さんが今注目しているカルチャーってありますか?
掟 : 基本的に受け身なんですよ。来た仕事をこなすタイプで。(音楽以外で)「何がやりたい」ってのはほとんどないんですよ。来た仕事を転がすのは得意なんですけど。俳優なんかもくればやりますし、器用なほうですよ。でも基本的に自分発信でっていうのは面倒なんで、注目しているカルチャー発信なんてとてもとても。みうらじゅんさんなんか大変ですからね。次から次へ「いま、マイブームはなんですか?」って聞かれるわけですから(笑)。もう、無理矢理作るんですって。インタビューの度に毎回適当に口からでまかせで、とりあえず口に出してみるって言ってましたよ(笑)。で、言った以上仕方なく始める、って。俺の個人的なことでいえば、最近子供が生まれたんですよ。で、一日子供中心に動いているせいか、テレビもNHKしか見ないし。世間の情報に疎いですね。お母さんと一緒でどんな歌が歌われているとか、そういうことにしか詳しくないですね。子供番組はおもしろいですよ。『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん』って番組があって、まいんちゃん役の福原遥ちゃんの歌が実にいいんですよ。現代はカラオケも盛んで、子供の頃から歌をうたうことに慣れ親しんでるから、みんなそこそこ歌が上手いんですよね。歌って歌い慣れるもんなんで。でもまいんちゃんは適度に下手で良いんですよね。「子供の歌声が聞きたい」って思うときありません? The Jackson Fiveもそうじゃないですか? アイドル歌謡曲ってのは、歌が聴きたいってわけじゃないんですよね。女の子の声が聴きたいんですよ。女の子の声が聴きたいってときに、こう・・・喉を震わせるようなディーバ的なものを聴きたくないじゃないですか? まいんちゃんのアルバムを家ではずーっと聴いてます。これはおススメ。
●では最後の質問になりますが、最近の学生や若者層を見て感じることはありますか?メッセージがありましたらお聞かせください。
掟 : 以前、大学生のやっているイベントに出たときに、「あれっ? 大学生ってこんなにバカで子供だったっけ?」と思ったんですよ。でもね、日本は「三十歳までは子供でいい」という余裕のある国なんで。三十までに徐々に大人になろうとがんばってもらえればいいんじゃないかな。自分が二十代前半の頃は、ちょうど女子プロレスが流行っていて、女子プロレスばっかり観てたんですよ。で、アイドルのイベントなんかにも行ってて。これらは本来、「実りが無いもの」なんだけど、最終的にそういった事も今は仕事になってて、お金になるようになりました。だから、出来るだけ「これは無駄だ」と思う事だけやっといたほうがいいですよ。「これは実りが無いな」と思ったらそこに突っ込んだほうがいい。実りがある事は大抵誰かが先にやってるから。実りの無い体験のほうが、後々自分だけしか言えない貴重な体験になるんじゃないかな、と。特に今はインターネットとかでどんな情報でも後付けで知ることが出来る時代じゃないですか? でも、現場に行かないとわかんない事って未だに山ほどあるんで。だから、できるだけ無駄なところに行ってください。「これは何の役にもたたない」っていうことだけをやっておいた方が良いです!
●それも素敵ですね。掟さん、ありがとうございました!
Art Yard informer5周年記念メッセージ+リリース告知!by 掟ポルシェ
掟ポルシェ(以下掟) : ちょうど中学、高校時代を過ごしたのが北海道の留萌というところで、札幌から北に140km程行ったところにある漁師町なんですよ。で、まあ・・・今と違って情報は非常に遮断されていて、「雑誌に書いてある事が東京で行われている事の全て」みたいな勘違いがどこの地方にもあったと思うんですよ。自分のところの地元は音楽が非常に盛んでして。その当時、全国を縦断するYAMAHAの『EAST WEST』というコンテストとか、素人のバンドの発掘コンテストみたいなのもあったんですけど、そういうところや学園祭に出てくるバンドは、当時普通ならBOΦWYやレベッカのコピーバンドだったりするんですけど、うちの地域だけおかしくて、そういう学園祭とかコンテストに出るバンドの9割がハードコア・パンクだったんですよ。しかもオリジナルで自分たちで曲作ってるっていう、そういうのが当たり前になっていて。クラスの半数ぐらいが『宝島』とか『DOLL』とかを主に読んでいて、どうも誤解していたみたいなんですね。「『宝島』と『DOLL』に書いてあることが今東京で行われていることのすべて」みたいな。普通は9割がBOΦWY のコピーとかをやっていて、1割が変な事をしてる、って感じじゃないですか?それが9割方がハードコア・パンクっていう異常事態で。
●逆だったんですね(笑)
掟 : ええ。80年代初頭のハードコアは暴力とワンセットでしたから、出てくるバンドのほとんどがスタッズを打った革ジャンを着て、チェーンとか振り回して会場を破壊しにかかる、みたいな(笑)。で、自分はハードコア・パンクのバンドを組んでるわけでもなく。ニュー・ウェーブとかを聴いていたんで、そんな音楽をやりたい人がいないからバンドすら組めない、っていう。
●では聴いていた音楽自体はどこから影響を受けたんですか?
掟 :うちの六歳上の兄貴が買っていたレコードとかを最初は聴いてました。俺が小学校六年生くらいの時は兄貴は高校三年生。当時流行っていたものはけっこうなんでもやってる人だったんですよ。その当時流行っていたのYMOのコピーバンドと暴走族をどっちも同時にやっていて(笑)。パンチパーマなのにボコーダーに向かって『TOKIO!』ですよ。当時YMOの本が出たんですけど、その中に書いてあった坂本龍一おすすめレコードを兄貴が買って来て聴いてたんですよ。それがウルトラヴォックスのJohn Foxxのソロアルバムだったり、THROBBING GRISTLEというノイズ・ユニットだったり。兄貴が聴いていたものの中から、さらに自分に引っかかったものを聴いていたんですよね。だからそこが多分、ルーツになっていたんだと思います。自分が今ロマンポルシェ。でやっている事のスタイルは、ある意味兄の影響をゴッチャに受けていると思います。白い長ランを着て、おっかない顔で説教をしながら、でも曲はニュー・ウェーブという。兄貴のヤンキー面と文化的な面の両方をないまぜにして引き継いで(笑)。
●なるほど(笑)。それも学生のころから積み重なっていったものだったんですね。
掟 : やっぱり、何もしなくてもカッコよくてモテたり、勉強ができたりだとか、そういうのが無かったらメインじゃない方を選びますよね。意図的にサブカルチャーのようなものが自分の中の基本線になっていったというか。あとは、兄貴が通販で定期購読してた雑誌に、『ビックリハウス』っていうパルコ出版から出ていた本(70年代~80年代中期にかけて発行されていたサブカルチャー雑誌)があるんですけども、その本の中に出てくるバンドを聴いたりとか。読者が投稿するネタハガキみたいなコーナーなんかもあって、ラジオの深夜放送の雑誌版みたいな感じだったんですよ。さすがに小学生だったんで、投稿したことはなかったんですけどね。そういったものも自分の趣味嗜好の元にはなってるんでしょうね。
●『説教』のスタイルっていうのはどのあたりから始められたんですか?
掟 :ちょうど97年からバンドを始めてるんですよ。で、当時世の中はどういう感じだったかっていうと、『新世紀エヴァンゲリオン』がブームになっていまして。そしてもう一方では梶原一騎先生(あしたのジョー、タイガーマスクなどで知られる原作者)の再評価などがあって、精神的なバランスをとるためにどちらも読んだりして。『エヴァンゲリオン』的な価値観がニュー・ウェーブだとすると、それをそのまま音楽的に再構成してやっちゃうと、軟弱だと思ってナメた態度で接してくる奴もいるだろうなと。自己陶酔的なものをまんまスカした顔でやるのは、性に合わない部分もあるし。で、曲が軟弱指向だから、バランスをとるために、曲の合間に軟弱でない梶原一騎的な思想に基づくパフォーマンスを入れて、怖い顔してればナメられないで済むんじゃないか、っていうのがあったりして。例えば『エヴァンゲリオン』では「僕はここにいてもいいのかな・・・」的な軟弱なことをグチグチ言ってるじゃないですか?(笑)自分の存在意義だとか存在理由だとかについて思い悩んでいる。で、方や梶原一騎先生は、己の存在理由に対してシンプルすぎるほどの回答を出してくれているわけですよ。「男ってのはなぁ・・・」と(笑)。『エヴァンゲリオン』的なものを求めている人たちにとっても最終的な回答になりうるし、抜け道というか救いがあるよなぁと。「男はいい車に乗っていい女を抱き、旨い酒を飲んでりゃそれでいいんじゃ!」という、人生の迷いを「男だから」というマチズモで一点突破する梶原先生の思想は正しいなぁ、と。で、ニュー・ウェーブの曲をやる合間に、「男とは何か?」ってのを語るっていうスタイルが出来て・・・まぁ、大体そこ自体が間違っていますけどねぇ(笑)
●(笑)・・・でもオーディエンスにはお説教のウケは良いですよね?
掟 : 最初は「間違ってるのか正しいのかわかんないけど、なんとなく良い事を言っている気がする」ってくらいが説教の着地点だったんですけど、最近はもっと分かりやすくしようと思って。率直に「・・・これは明らかに間違ってる!」と思われるようにしてます。間違ってることを堂々と言い張るのも男らしさだと思っているので。
●それでは質問を変えて、4月にロマンポルシェ。のニュー・アルバム『盗んだバイクで天城越え』がリリースされますが、過去の作品からの変化について教えていただけますか?
掟 : 違いは色々とありますけど、まずひとつは機材が変わった事。なぜなら、1年半前に家が火事になって機材が全部焼けちゃったから。それまではアナログシンセサイザーをアナログミキサーを使ってリアルタイムに操作してたんですけど、仕方なくパソコンベースに移行するしかない。ソフトシンセ化されてるシンセの実機って、中古市場価格が高いシンセが多いんですよ。だから、前よりはもしかしたら音が良くなってるんじゃないかと思います。以前はもっとストレートに、チープに聴こえるように「音を迫力なくしてくれ」とミキサーには言ってたんですけどね。80年代にSigue Sigue Sputnikっていうバンドがいたんですけど、彼らをひとつの手本にしていて。ロックなんだけど低音や重さがほとんどなくて、想像を絶するほどチャカポコしてるっていう。それって逆にこう・・・ロックから重さを取ることによって、ビックリする人もいるかな、と。ロックなのにカッコよさの基礎になっている重さを排除してしまうのは潔いし、勇気がいるなと。だからこそ、聴いた人にショックを与えられるかなぁと。まあ、当初は低音をホントに入れないで、ちっちゃ~な音でやってたんですけど、ライブになるとさすがに寂しくなるんで(笑)
●ちょっと音の隙間が・・・(笑)
掟 : いや、もうスッカスカでね(笑)。レコーディングの時に「すみません、低音出してください」って言ったら「元から入ってません!」ってミキサーの人に怒られたりして。「じゃあチョット入れようかな・・」とようやく思い出したっていう。最近は低音も結構はいってますけど、元々あんまり迫力のある、低音が豊かな音楽が好きじゃないんですよ。
●ニュー・ウェーブ時代の音楽って、たしかにあまり低音のイメージってないですよね。
掟 : まあその時代は、低音を極端に入れるバンドと、極端に削るバンドばかりですよね、多分。「ロックのかっこよさとは違う完成度」を求める上での方法論っていうか。
●なるほど。
掟 : あと、ロックフェスとか本当に良くないと思うんですよね(唐突に)。ああいうのは全部潰したほうがいいですよね。若い子はロックフェスに出ているバンドしか聴かなくなってるでしょ。そして、ロックフェスにでているバンドだけが売れて行く。でもね、テレビで音楽チャンネルとかを見てて、不思議な気持ちになるんですよ。「なんでこんなにロックしかないんだろう?」って。世の中に山ほど色んなバンドや音楽があるのに、なんで「普通のカッコいいロックバンド」しか出てこないかな、って。頭にきて仕方ないというか。ロックが刺激的だった時代はとうの昔に終わっていて、今のロックには目新しさも何もないじゃないですか。ロック以外のことをやっている人たちが、昔より実は出てきづらくなってるんじゃないかな?という気がしていて。これは良くないなぁ、と。ロックフェスの出演バンドの選定をしてるやつがまず悪い!(笑)。
●でも、掟さんと関わりの深いPerfumeも結構、毎年フェスにでていますよね?(笑)
掟 : だからああいうものを出せばいいんですよ!もっと!
●そうですね。もっと混ぜてほしいですよね(笑)
掟 : そう、もっと混ぜないと!例えばロックフェスというからにはロックが出てくるんでしょうけども、でもそうじゃない音楽にも「ロック・スピリット」はあるわけじゃないですか?「ロックとは何か?」というのを考えたら、アイドルとかデスメタルだとかも均等に出てないとおかしいと思う。
●ロックというのはスピリットというかマインドの部分だ、と。
掟 : そうですよ。ロックの本来の姿とは、刺激であるべきであって。内田裕也先生の言うところの「ロックンロール」が本当の「ロック」なんですよね。ギターウルフのロッケンロー!も同じです。ロックとは常に刺激的なものであろうという心意気であって、音楽性がどうのなんて一切関係ないですよ。だからもう、いまあるロックフェスはね、ホントに一回全部やめましょう。ロックフェスじゃないフェス、ロックじゃないフェスをやればいいですよね。
●それいいですね。『ロックじゃないフェス』(笑)
掟 : 友達が『ロックじゃないフェス』をね、数年前までやってたんですけど、不景気でやめちゃいましてね(笑)。RAWLIFEってイベントなんですけど。ロックフェスに出ない人しか出演しないイベントをやっていて素晴らしかった。出演しているのもSTRUGGLE FOR PRIDEみたいな振りきれたハードコアとかね、極端なものしか出ないっていう。会場はそのときによって違ったんですけど、最後は千葉の廃工場みたいなとこでやったらしく。たぶんそこの廃工場の中の霊がみんな憑いて来ちゃったんでしょうね(笑)・・・それで多分・・・。
●あああ・・・(笑)
掟 : 因縁深い場所に引っ張られちゃったかなぁと。でもまあ、『ロックじゃないフェス』は存在しなきゃダメだと思いますよ。そして今行われているロックフェスも、是非音ロックじゃない人たちをもっと出すべきだ、と思いますけどね。ロック、流行り過ぎですよ! ちょっとバランス取ったほうがいい。もうね、ロックバンド自体を法律で禁止した方がいいんじゃないかとすら思いますよ。あるいはロックを名乗るには内田裕也先生の許可が要るとか。
●(笑)では、話題を変えて。昨年から田代まさしさんとツアーをされていますが、きっかけは何だったのですか?
掟 : きっかけは、田代さんがいろんな仕事しなきゃ食ってけなくて・・・それでですね・・・(と、おもむろにArt Yardインタビュアーにお茶を注ぐ掟ポルシェ氏)
●(笑)・・・ありがとうございます、恐縮です
掟 : それでですね、携帯の着ボイスのダウンロード・コンテストみたいなのに参加したんですよ。で、着ボイスが・・・(スタッフ全員に茶を注ぎ始める掟氏)・・・ダウンロード・チャートの10位以内に入ったら、ご褒美としてCDを出してあげる、っていう事だったらしいんですよ。その結果、一位オードリー、二位はんにゃ、三位が田代まさし、ということで、じゃあご褒美にCD出しましょう、っていう。でもオードリーとかはんにゃはそういう携帯の着ボイスのサイトからじゃなくても、メジャーなところでいくらでもCD出せるじゃないですか?結果的に田代さんしか出さなかった(笑)。で、田代さんの着ボイスをそのままCDにする訳にもいかないんで、曲にしようと。で、田代さんのマネージメントをしている方がたまたま1番最初に思いついたのが俺だったんですって。もともと事件の前から田代さんのことは大好きだったので、ふたつ返事で話を受けました。田代さんの出てるコントやCMを自分で編集したビデオがうちにあるくらいです。常にいっぱいいっぱいで強迫観念にかられている所も含めて、自分に近いものを感じるというか。
●田代さんとはCDショップも回られていますか?
掟 : それがCDショップ、イベントやらせてくれないんですよ~。
●でもこの前インストアを・・・
掟 : インストアイベント、下北沢ディスクユニオン一軒だけで、あれ以外は99%以上断られました。ディスクユニオンはたまたま友達が居たんで。でも他のところは「田代さんはダメ」っていう。元犯罪者だからという道義的な理由で。そんなこと言ったらねぇ、誰だって出来ませんよ。◯◯◯◯とか。
●そうですよね~。◯ッ◯ー・・・。CD出せないですよね。
掟 : そうです、そうです。ねぇ?三年半刑務所で刑期を務めているわけですから、そういう人に対して社会はもう少し優しくしてあげてほしいなと思いますけどね。「越谷のデパートでイベントやりましょう」なんて言われて行ったら、やっぱりデパートの上層部からダメ出しが出たりとか。CDを出す会社もインディーズで、これが初めてのCDリリースですから力もない。いま、田代さんとマーシー☆ポルシェで全国のクラブを深夜帯に回ってるんですけど、単なる手売りツアーなんですよ、これ。通常のCD販売店に枚数あんまり置いてもらえないし。まぁ、初回ロット売り切るまでは頑張りますよ(笑)。
●ところで、掟さんがコラボレーションしたり、単純に会ってみたい方っていますか?
掟 :さかなクンには会ってみたいですね。あ、さかなクンは♪鳥くんと二人で営業を回ってるんです(笑)。鳥のこと何でも知ってる♪鳥くん。さかなと鳥に一度で詳しくなれるっていう(笑)。一緒に仕事したことのある人は、「すごくいい人だ」ってみんないいますね。こういう仕事をしていると、あんまり悪い人には会わないもんだなぁ、売れてる人で悪い人ってそんなにいないもんだなぁって思いますよ。今、スペースシャワーという音楽チャンネルで番組をやっていまして、ゲストは大体いい人ですね。九割五分はいい人、あとの一握りは自分がうまく絡めなくて困ったな、みたいな人(笑)。
●掟さんでもそんな事あるんですか?(笑)
掟 : 自分の場合はどちらかというと、こう・・・向こうの話を無視して話を進めないといけないパターンですから。それでも、向こうの方が自分より遥かに無視して進めていく人もいますから(笑)一緒にやってて「やっぱすごいな~」と思ったのは、T.M.Revolutionの西川貴教さんとか、やっぱり話の転がし方とか抜群に上手いですよ。ほっといてもちゃんと面白い話にもっていってくれる、みたいな。ケミストリーやゆずがとても気さくで腰が低かったりとか。人間と人間だから、会ってみないとわかりませんよね。あと、想像通り過ぎて驚いたのは河村隆一さんですね。皆が思ってる河村隆一像のまま、というか。ボケてるところにツッこみを入れても、言ってることがボケてるってわかってないからリアクションも帰ってこないっていう(笑)。さすがは河村隆一だと思いました。
●(笑)あっ、ところで掟さんはアイドルファンとしても知られていますよね。それに、Perfumeをインディーズの頃からずっと応援されていたり、そんな掟さんにとって広い意味でアイドル、というのはどういった存在でしょうか?
掟 : 「アイドル」って、一般的には90年代以降はオタクが好きになるもので、「オタクが好きになるものはダメなもの」というか・・・今の日本はクラスの中のケンカ強いチームが中心になるので、そういったケンカ弱いチームが好きになるものは出来るだけ排除する方向に行きます。コミケに何百万人集まろうとも、世間的には「無かった事」になる、みたいな感じだと思うんですよ。あくまでオタクという村の中での出来事だから。で、「アイドル・カルチャー」っていうのもその一環で、「オタクが好きになるものだからキモチ悪いね」ってところで止まってたと思うんですよ。それがモーニング娘とかが売れて、99年くらいからちょっと変わって来て。で、Perfumeが売れて、さらに変わったんですよ。「アイドルを好きになっても恥ずかしくない」みたいな感じで。今の若い子たちにとっては特にそう。まあ相変わらず地下アイドルしか出てないどよーんとしたヒッドイ所も、パラレルワールド的には存在してるんですけど。でもそういうのは別として、「アイドル」というものを好きになるのが今はそんなに恥ずかしいことじゃなくなってきた。今、AKB48のお客さんが普通に高校生だらけなんですって。アイドルの現場というと、もう自分みたいなアラフォーのオッサンしかいなくて気持ち悪い場所だと思われてたのが、ちょっと違ってきてるのかなぁと。
●なるほど、たしかに「恥ずかしい」というのはないかもしれませんね。
掟 :彼ら高校生にとっては、子供の頃からモーニング娘が普通にテレビに出ていて、でPerfumeなんかも普通にテレビに出ていて。どちらも売れていて、それを聴いている事はなんにも恥ずかしくない、っていう環境で育ってきた。だから、AKB48は前近代的なベタな恋愛詩を歌っているんですけど、その子達にとってはアイドル初体験なわけで。しかも、オタクカルチャーと同義語じゃなくなってきた中で育ってるから、それが「恥ずかしい」なんていう刷り込みがない。俺の中ではそれを「何とかしてアイドルファンとアイドル歌謡の失地回復しよう!」っていうことで頑張ってきたつもりなんですけど、「もう自分の役目も終わったかなぁ」って思う時はありますね。自分が望んだアイドルカルチャーの未来像はそうじゃないので、まだまだがんばらなきゃいけないと、買ってな使命感を持っているんですけど。今、バニラビーンズっていうアイドルと仕事を通じて関わっていて。Perfumeの時と同じように、これからどうやって売っていけば良いか、とか微力ながらネタ出しとかしています。CDが出たらトークショーの司会もやったりとかね。バニラビーンズって80年代のネオアコや渋谷系、90年代のカーディガンズのようなスウェディッシュポップみたいなのを今再構成してネタ元にしてやってる訳ですよ。「アイドルなのに、こんな事をやってる」ってのが面白くて。バニラビーンズの曲でリミックスを2曲やったんですけど、ひとつはDivineとかDead or Aliveとか、※Stock Aitken Waterman(※80年代のプロデュース・チーム。カイリー・ミノーグやバナナラマのプロデュースで知られる)みたいな、ああいうハイ・エナジーな感じの曲調にして。もう1曲は、"James Brown is Dead"のL.A.スタイル(オランダのテクノユニット)みたいなデステクノ風にリミックスにしてみたりとか。で、それはどっちも下品すぎる音楽なので、曲のネタ元に入れ込むとファンの人たちの中には結構拒否反応があったりして。「曲はやんなくていいから」ってよく言われます(笑)。まあそれはもっともだな、と思いますけど。バニラビーンズは現状で音楽的にとても完成度が高いので、なんとかこのままでモノになってくれないかな、といつも考えてはいます。
●そうなんですね(笑)
掟 : 実際アイドルが売れるなんてことは未だに奇跡で、Perfumeが売れるまでは実際ありえないことだったぐらいで。モーニング娘はテレビの人気番組のワンコーナーとしてテレビ主導で始まったことだと思うし、テレビの力があって売れるのもわかるんですけど、Perfumeが売れたことはほんと、奇跡みたいなものですからね。音楽にせよメンバーのキャラクターにせよ、やってることは圧倒的に正しいから、なんとか売る方法がないかな?といろいろやってたんですけど。でも自分たちが助力している時代はぜんぜん売れませんでしたね(笑)。木村カエラさんの一言があれば簡単に売れちゃうっていうね(笑)。あとは、バニラビーンズは「アイドルらしくない」ってところがおもしろい。アイドルの条件として禁じ手だらけなんですね。普通アイドルって15、6歳の女の子がなるものじゃないですか?それがもう普通に二十歳超えてるし、二人とも身長が170cmぐらいあったり。ベタベタなアイドルが好きな人って、そういうの苦手なんですよ。「十代でないと・・・」とか「アイドルは身長低くないと・・・」とか。でもそんなの関係なくて、「アイドルとはアイドル歌謡曲を歌ってる人たちのことだ」っていうことで括っちゃえば、そういう要素は逆に人目に触れたときに、「アイドルなのに◯◯」っていう売り文句の一つとして・・・ひっかかりになっていいんじゃないかと思ってます。バニラビーンズは面白いんですよ、中の人が。身長172cmのリサは、異常な程の大金持ちの娘さんで(笑)。
●異常な程の大金持ちって・・・(笑)
掟 : お嬢様学校に行ってて、ご学友はもっとお金持ってたりするから自分のことは全然金持ちじゃないって言い張るんですけど。新幹線に乗って「おしぼりが出てこないのはなんで?」ってビックリしてたっていう。「それグリーン車だよ~」ってツッコむと、「あの、新幹線、滅多に乗らないんでわからなかったんです! 普段は飛行機移動でっ!」・・・と、話がもっとヒドい事になるという。
●あはは(笑)
掟 : コンビニでほとんど買い物したことないし。よくライブ中のトークでやっているのは、コンビニで売っているものの値段当てクイズ。俺が司会で、「サッポロ一番袋入り、さて幾らでしょうか?」って。「なんですかそれ? サッポロ・・・ってことは・・・ビールですよね?」「んんん~・・・ちがう・・・んじゃないかな?」とか(笑)。で、「ラーメンは1杯1000円くらいだから・・・半分として、500円!あっ、450円!」みたいな。50円差し引いたことで庶民感覚を表そうとしてるんだけど、全然無駄だったっていう。あと、ユニットバスを見てビックリした、とか。ほら、お金持ちだからビジネスホテルとか泊まったことないから(笑)。「みてみてみて、これ見て!お風呂とトイレが一緒!」とか。「Perfumeの"ワンルーム・ディスコ"って聴いた事ある? あのワンルームの中に付いてるのが、大抵コレ」「・・・そうなんですかぁ・・・(感心)」って(笑)。微笑ましいほど浮世離れしてるんですよ。金持ちも度が過ぎると全然嫌味に聞こえなくて面白いですよ~。
●ではアイドル繋がりなんですけど、三宿で行われている『申し訳ないと』というDJイベントには掟さんはどういうきっかけで参加するようになったんですか?
掟 : 主宰しているミッツィー申し訳さんが宇都宮プラネットというクラブのオーナーなんですよ。で、ロマンポルシェ。のツアーのときにプラネットさんにお世話になったりしていて。で、ミッツィーさんと俺と、ライムスターの宇多丸さんと、電撃ネットワークのギュウゾウさんと、m-floの所属事務所ARTIMAGEの社長のGEEさんというメンバーが中心でやってるんですが、「なんでこのメンバーにしたんですか?」って俺もミッツィーさんに聞いた事あるんですよ。『申し訳ないと』はJ-POP限定のイベントなんですけど、色々なミュージシャンやDJに、J-POPだけでDJやってくださいっていうと、フロアライクなものを並べてかけて無難につなげたりするだけで、偏りがなかったりするんですって。でも、俺はアイドルの曲しかかけないし、ギュウゾウさんはロックしかかけない。宇多丸さんもオールジャンルでいろいろかけているんですが・・・なんかこう、そこにもその人独自の偏りがあるっていうか。その偏り具合をたまたまミッツィーさんが見て、他の第一線でやっている本職のDJの人たちと比べても遜色のない人がこの人たちだった、といってましたね。その結果、10年以上も続いているというね。定期的にやってるのは三宿webってクラブで、もう八畳間ふたつくらいのちっちゃいところなんですけど、あそこで毎回すし詰め状態でやってますね。
●でも人気ですし、まだまだ続きそうですよね?
掟 : でも、ミッツィーさんも一回出来上がったものを、こう・・・全て破壊したくなる人なんで。完成形に近づくと急にお達しが下ったりとか。「これから申し訳ナイタズも7人から14人にすることにしました」とか(笑)。
●EX◯LEじゃないですか(笑)
掟 : 「1軍、2軍入れ換えもアリます」みたいな。急にメールがきたりして「ナニッ!?」みたいな(笑)
●あっははは(一同爆笑)
掟 :ホント、面白いんですけどうかうかもしてられないんですよね(笑)。DJイベントへのレギュラー参加も、モーニング娘。ハロプロの曲だけをかける「爆音娘」とか、昔からいろいろやってたんですけども、多くのDJと同じように微動だにせずにやって、お客さんの顔色伺いながら地味~につなげようとしたり、やっぱり曲と曲がつながんなかったりして、単に下手な感じでかけてたんですよ、以前は。でも、2003年に日比谷の野音で、ミッツィーさんと俺で、ORANGE RANGEとかが出ているイベントの転換15分×7回のDJってのをやったんですよ。日曜の昼間から夜にかけてのDJとバンドのイベントだったんですけど、ORANGE RANGEとかが出ているんで、お客さんが中学生の女の子とかだったんですよ。で、中学生だから、もう3000円払ったら払った分だけ楽しみたいわけじゃないですか? だから、バンドとバンドの合間=休憩タイムだという発想はないんですよ。DJも「15分ワンセットで何回もやってくれ」なんてハウスの人なんかは絶対できないから、俺たちが呼ばれたんですけど、そういう客層だから、転換15分の間もお客さんが何となくこっちに期待を持ってみているのがわかるんですよ。で、「何かお客さんを喜ばせるようなことをやらないといけない」という気持ちになって。曲の振り付けとかを無理矢理加えていって、客煽りをずっとやってると、ホントについてくるんですよ。3000人くらいお客さんが入るところなんですけど、最初1割だったこちらの転換DJに反応しているお客さんも、徐々に全員がこっち向いてくる感じになって、本当にそのとき高揚感があったんですね。「ああ、DJって楽しいもんなんだな」って。それからですね、曲のつなぎを一切考えないで、全部カットインで、あとは踊ってゴマかすっていうスタイルが確立したのは。
●ところで、新しいアルバムについてもう少し教えて頂けますか?
掟 : あまりにも普段歌っている曲が下品で、売れる要素が一切ないので、何か売れそうなことを入れ込まないと、アルバムの予算を切れないよと事務所の社長から言われて(笑)。じゃあいっそ歌謡曲のカバーをやろうと。それでイモ欽トリオの『ハイスクール・ララバイ』を歌わなきゃいけないことになりました。拷問みたいなもんですからね・・・四十一歳にもなって「ハイスクール」もクソもねぇだろう・・・って。イモ欽トリオやってた頃既にオッサンだった山口良一だって当時28歳ぐらいなんだから。我ながら目も当てられない地獄のハイスクール感ですよ・・・。
●大丈夫ですよ。「ハイスクール」は、マインドですから(笑)。
掟 : マインドォ・・・??
一同笑
掟 : マインドだったら余計違うんじゃない?(笑)。で、一緒にバニラビーンズにもコーラスで入ってもらっているので。あの子たちも、アイドルなのに二十いくつだし(笑)。大人がこう、死ぬ気でハイスクール感を出しているところとかですね、そういうところを楽しみにしてもらえたらと思います。他にもくだらない歌が山ほど入ってますんで。自分のバンドの曲はね、「俺は良い!と思ってるけど、お前らには薦めない」ってのが基本です。自分のバンドの曲はね、自分は本っ当に大好きなんですけど、なかなかそれがこう、どこがよくてやってるのか理解されないんで。人にはお薦めしない(笑)。引っかかる奴だけ勝手についてこいっていうね。でもそうすると、ナメてかかってくるやつもいましてね。ロマンポルシェ。の10周年記念イベントとかでも、「別に曲とか聴かなくってもいいでしょ!?」みたいな事を本気で言われると、意外と本気でカチーンとくるんですよ(笑)。かといって、非常にバカバカしい曲をやってるんで、ある意味もっともだなとも思うんですけどね。今回もヒドい曲がいっぱい入ってますね。『男は薄着』とか。何も伝えない、何も心を揺さぶらない。でも呆れるほどのくだらなさなら世界一です。
●・・・川はもう渡らないんですか?
(急にキレて)渡るかそんなもん! だってね、泳ぎは本当に不得意ですもん! しかもあの川を渡るロケやってた頃って水温4度くらいですよ。もう少しで氷がはる温度! ウェット・スーツとか用意してもらって着てるシーンもありますけど、体のサイズに合わないブッカブカのがきて、首から水が入ってきちゃって。冷たいし浮かばないしで最悪でしたね。もう川は渡らないです。最終回の時に大事マンブラザースと一緒に言ってますからね、「橋が一番大事」って(笑)。
●あはは(笑)なるほど。では掟さんが今注目しているカルチャーってありますか?
掟 : 基本的に受け身なんですよ。来た仕事をこなすタイプで。(音楽以外で)「何がやりたい」ってのはほとんどないんですよ。来た仕事を転がすのは得意なんですけど。俳優なんかもくればやりますし、器用なほうですよ。でも基本的に自分発信でっていうのは面倒なんで、注目しているカルチャー発信なんてとてもとても。みうらじゅんさんなんか大変ですからね。次から次へ「いま、マイブームはなんですか?」って聞かれるわけですから(笑)。もう、無理矢理作るんですって。インタビューの度に毎回適当に口からでまかせで、とりあえず口に出してみるって言ってましたよ(笑)。で、言った以上仕方なく始める、って。俺の個人的なことでいえば、最近子供が生まれたんですよ。で、一日子供中心に動いているせいか、テレビもNHKしか見ないし。世間の情報に疎いですね。お母さんと一緒でどんな歌が歌われているとか、そういうことにしか詳しくないですね。子供番組はおもしろいですよ。『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん』って番組があって、まいんちゃん役の福原遥ちゃんの歌が実にいいんですよ。現代はカラオケも盛んで、子供の頃から歌をうたうことに慣れ親しんでるから、みんなそこそこ歌が上手いんですよね。歌って歌い慣れるもんなんで。でもまいんちゃんは適度に下手で良いんですよね。「子供の歌声が聞きたい」って思うときありません? The Jackson Fiveもそうじゃないですか? アイドル歌謡曲ってのは、歌が聴きたいってわけじゃないんですよね。女の子の声が聴きたいんですよ。女の子の声が聴きたいってときに、こう・・・喉を震わせるようなディーバ的なものを聴きたくないじゃないですか? まいんちゃんのアルバムを家ではずーっと聴いてます。これはおススメ。
●では最後の質問になりますが、最近の学生や若者層を見て感じることはありますか?メッセージがありましたらお聞かせください。
掟 : 以前、大学生のやっているイベントに出たときに、「あれっ? 大学生ってこんなにバカで子供だったっけ?」と思ったんですよ。でもね、日本は「三十歳までは子供でいい」という余裕のある国なんで。三十までに徐々に大人になろうとがんばってもらえればいいんじゃないかな。自分が二十代前半の頃は、ちょうど女子プロレスが流行っていて、女子プロレスばっかり観てたんですよ。で、アイドルのイベントなんかにも行ってて。これらは本来、「実りが無いもの」なんだけど、最終的にそういった事も今は仕事になってて、お金になるようになりました。だから、出来るだけ「これは無駄だ」と思う事だけやっといたほうがいいですよ。「これは実りが無いな」と思ったらそこに突っ込んだほうがいい。実りがある事は大抵誰かが先にやってるから。実りの無い体験のほうが、後々自分だけしか言えない貴重な体験になるんじゃないかな、と。特に今はインターネットとかでどんな情報でも後付けで知ることが出来る時代じゃないですか? でも、現場に行かないとわかんない事って未だに山ほどあるんで。だから、できるだけ無駄なところに行ってください。「これは何の役にもたたない」っていうことだけをやっておいた方が良いです!
●それも素敵ですね。掟さん、ありがとうございました!
Art Yard informer5周年記念メッセージ+リリース告知!by 掟ポルシェ










