本誌でも度々取り上げて来たThe Fractures(フラクチャーズ)。初のフルアルバム"red out"を引っさげて、渋谷O-nestをスタート地点に関西各地をツアー転戦中の彼らが、Art Yard informerのインタビューに登場。ライブでまず耳を奪われるのは、中村大智(Vo)のヒロイックなまでの恵まれた声。そしてツアー先でのgolf(a.k.a sleepers film)との共演の際に披露してくれたアンプラグドでは改めて声の良さと、このバンドの懐の深さを実感させてくれた。平均年齢22歳、ファイナルの9/24(金)下北沢GARAGEへ向けて躍進中の彼らだが、早くもその後のロング・ツアーを予定している。
ロックトリオとして申し分ない「声のグレース」を持つこのバンドについて多くの読者に知ってほしい。本誌で特集したモーモールルギャバンも声による「芯」のある才能を感じるが、近年の魅力的なロック・バンドは「声の力」を大いに感じさせる。天性のものであるが故に得難く、ライブでのリスナーの楽しみは大きい。このバンドはかならずやブレイクするだろう。
中村伸之(以下のぶ Bass):はい、僕と中村大智(Vo/G)が高校が一緒だったんですが、高校を卒業後にバンドを組もうという話になっていて。高校の時は一緒にはやってなくて。僕が浪人中にギターで遊んでいたりして。
中村大智(以下大智 Vo/G):浪人中の彼を僕が邪魔してたんですよ。
のぶ:その時はドラムが居なくて、僕がギターで、ベースの子がもう一人いて。僕が大学に入った時に大智が専門学校に入って、そこでドラムの清水と出会ったんですね。それで、4人バンドとして前身バンドを結成したんですが、ベースの子が脱退することになって、僕がベースに転向して。で、今のThe Fracturesの形が出来たんです。
The Fractures @渋谷O-nest 『Tokyo Edge』
大智:その時の曲で今やっている曲は『危機』と『neco』くらいで。しかも4人の時はライブやってないですからね。3人になってからです。
●1stアルバム『red out』でも印象的ですが、中村(大智)君は単純にかなり格好良いタイプの声ですよね。日本語ロックで絶対聴きたいような声質というか。ライブでもそれがブレていないという。リスナーからは貴方の声についてどういった反応を得ていますか?
大智:どうだろう、始めた頃はライブといっても、ただのガチャガチャだった。ほら、大抵ライブハウスって(バランスを取れてないと)声聴こえないじゃないですか?普通の・・・いわゆる雑多なミックスで、ぐちゃぐちゃだったんで。際立ってなかったから。最初は曲がカッコいいとかそういう事だけだったんですが、最近はアルバムもマジメに作って、そういうところでは声は良いと言われますけど、自分ではそんなに意識していないです。僕的には自分とは反対の、線の細い人というか声の高い人の方が好みなんで。
●えー!?
のぶ:無い物ねだり(笑)
大智:好みなのはガラガラとかじゃなくて。ビートルズで言えば、ジョン・レノンよりポールみたいな奇麗な声がいいな、ってのがありますね。
●でも、(大智くんは)逆のタイプだよね。とはいえ、うらやましがられる声だと思うけど?キラー・ボイスというか。ライブでも歌い始めで「・・カッコ良い声だ」というのがあるけれども。
のぶ:そうですね。僕も高校時代なんかに彼とカラオケ行ったりしてましたけど、大智の歌声の良さってのは当時からありましたからね。ま、クラスメイトに口にして「いいよネ」なんて会話しないですけど(笑)
●確かに(笑)でも、メンバー的に感じるところはある、と?
のぶ:僕個人としては・・今のバンドっていうのは、演奏なり曲作りっていうのはマジメにやってるというか。でもその中で、声質とかってのは一番極めるのが難しいというか。例えばジャンルで区別がないようなところでは、声が良いってのは自分たちの武器として捉えてはいますよね。
清水健司(以下清水 Drums):俺はライブ中でもけっこう歌が聴こえてきちゃうというか。声質で叩いていて気持ちいいってのもあるんで。スタジオなんかでも歌無しで合わせることもあるんですけど、声が入ってくると演奏する時のテンションが違ってきますね。
●なるほど。ところでThe Fracturesとして影響を受けてきたのはどんな音楽?
大智:これは多分、好きな音楽と影響を受けた音楽は別だと思っていて。僕個人で言えば、影響を受けたバンドはSUBWAYSだと思う。聴くのは・・・UKオルタナとかばっかですね。最初はメロコアとかからで、Oasisとかそういうのに入ってって。SUBWAYSはたしかデビュー時に平均18歳だとかで。僕が高校生の時で。僕らより2、3個上かな。あとは・・・日本人でいえば・・奥田民生さんとか。
清水:俺はもともと邦楽しか聴かなかったっていう。大智たちと知り合ってから洋楽を聴き始めて。俺だけ多分違うんですよね・・・俺は完全にLOUDNESSとかハードロック的なもので。そこから洋楽聴くようになってからはOasisとか。今は洋楽ばかり聴いてますけど・・もともと軽くペコペコ叩く感じだったんですけど、今のパワフルなスタイルはそういったところからですね。そこから少し落ち着いて・・もうちょっと聴かせられるようにっていう。
のぶ:僕はベタベタなんですけど、NIRVANAとOasisってのはすごく聴いてましたね。カート・コバーンが亡くなってからなので、タイムリーではないですけど、大智から教えてもらったり、兄貴がなんでも聴くひとなので。あとはルーツを辿るのが好きなので、ビートルズなんかもOasis聴いてからのビートルズという感じで。ビートルズを聴くとその世代のバンドを聴きたくなって。60年~70年代のものをけっこう聴いてますね。聴いていて気持ちいいのは古めのソウルとかブラックミュージックなんかですけど。
●なるほど。ところで今回のアルバムのレコーディングで最も重視した点はなんでしょうか?
大智:なんだろ・・まあ個人個人、違うとは思いますけど、僕はギターの音ですかね。SGというよりは、VOXの音。VOXらしい音というか。そこかな。
のぶ:僕はリズム隊のボトムのしっかりした感じをどこまで出せるか、っていうところで。むしろそれ以外の部分は固くなっちゃうので、それだけというか。
清水:僕はどれだけ自分の思うような、それこそ機材から何から、思い描いていた形で演るか、というところでした。
●それ以前の、曲を組み上げて行く時は?
のぶ:どれだけ自分たちらしくカッコ良いか、ってとこで。それらしくカッコ良く、っていうのはフレーズを作れば出来るけども、そこに更に自分たちがそれを演って、大智が歌ってカッコ良い曲かどうか、っていう。そこです。だから、どれだけスタジオで合わせて、なんとなく曲的なものが出来ても、自分たちらしくないな、とか面白くないな、と思ったら速攻でお蔵入りです。
大智:あんまり「作ろう」と思って作った事はなくて、ほとんどスタジオで「今のいいんじゃない?」という感じで、歌が乗ったら曲になるし、歌が乗らなかったらボツになるという感じで。家で誰かが作ってくるとしても、ワンフレーズだけしか作ってこない。最初から最後まで出来たのはPVの『Seaside Police』です。家でLogicとかで打ち込んで、ギター載せて歌のせて。で、スタジオ入った時に、「ここをこうしてくれ」って言うんじゃなくて「こんな感じ」って。結局のところ、シミケンとのぶが弾いて、それが良いってのもあるんで。『危機』はAメロからサビまでは全部作ってました。
●『危機』はAメロが印象的だなぁ、と。『Aメロ曲』ってあるよね。
のぶ:そうですねー。けっこうありますね。
大智:あれは・・・・神が降りた(笑)。でも結局・・・最近聴いているような、SUBWAYSじゃなくて・・例えばThe Vinesでもそうですけど、大抵サビじゃなくてイントロかAメロで持ってかれるっていうのが多いんで。
●確かに。では、The Fracturesでの愛用楽器について教えてください。
大智:僕はギブソンのSGスペシャルです。P90のついたやつ。あと、生意気にもマイアンプを持っていまして、VOXのAC30。そんなとこですね。ペダルは最近あんまり使っていなくて。あとはMarshallのSHRED MASTER。ペダルの中ではいちばんお気に入りです。
●ギターにもなにか仕込んでるよね?というかほぼアンプ一発でライブに臨んでいるよね?
大智:仕込んでますけど、あれは企業秘密で(笑)でもピックアップの高さで気持ちいいところを探していますね。
清水:僕は好きなのはSONOR、肉厚な音がするので。今はもうちょっと高音で抜けるのが好きなので、DW、シンバルはPAISTEを使っていますね。前はいろいろ使ってたんですけど。ペダルはSONOR。
のぶ:僕はFenderのプレベ、それとサンズアンプ、っていうけっこう現代的な。それと飛び道具でRATを踏んでます。ヘッドはその場にあるもので。でも最近acousticが良いな、と。ゲインの持ち上がり方が好きで。
●なるほど。では、The Fracturesがライブで重視していることは?
清水:(大智の)声を聴いてもらう、じゃないの。
大智:ま、音じゃないですか。最終的に。バランスというか。バンドの音を聴かせることですね。
のぶ:昔は勢いというのを出したかったんですが、今はもっと・・バランスとかですね、最近重視しているのは。それと、僕は単純に気持ちの問題なんですが、夢中になればなるほど近くにいるお客さんにいっちゃうんですけど、なるべく遠くへ、というか客席の後ろへというか。
大智:僕は・・ライブハウスの人。毎日いろんなバンドが出ている中で、こいつら良いな、ってのを感じてもらいたい。最終的にはお客さんなんですけど、もちろん。昨日出てたバンドとはちがうんだ、と。
清水:僕はお客さんの表情をけっこう見てますね。楽しませられるようなドラムで、というか。
●では、最近印象に残っているライブでのエピソードはありますか?
大智:ツアーをスタートした渋谷O-nestからそうですけど・・・遊びじゃないですけど、緊張とかが無くなりました。それまでは・・・緊張してましたね。結局、人が居なくても、数百人居ても、同じ事ができなくちゃいけない、って言われますけど、人がいた方が良いパフォーマンスは出来る(笑)。自然と楽しいっていう。
のぶ:やる時の気持ちは一緒ですね。人が多いと単純に人いっぱいいんなー、くらいで。あんまり変らないですね。7月のツアー初日もその翌週末もかなりお客さんがいて、その中でお客さんとのやり取りをものすごく感じるライブで。たとえばタレントさんのお客さんなんかでも、純粋にライブをものすごく楽しんでくれてるな、っていうのが印象的でした。
大智:たとえばツアー初日にペトロールズとかregaが好きで見に来てくれてたアート作家さんたちとかも、その翌週の下北沢でタレントを見に来た人でも、良いものは良い、ってことで反応があったし、それがCDのセールスに繋がっているので、それは印象に残っているし、興味深かったですね。
のぶ:そう、バンドマンほどジャンルを気にしたりもするし、その場にいる人たちが関係性を築こう、というのがある場所にはあるので、ああいう感覚は楽しいですね。
●ツアーでのライブやアルバムをリリースして環境も変ったと思うのだけど、今の音楽シーンについて感じていることはありますか?
大智:例えば世間的に今CDが売れない、ってことも、CDは売れる売れないとかじゃなくて、なんというか、こっちが売るか売らないか、だと思っていて。
のぶ:多分、僕らみたいに小売店よりもライブで売るってのを主体にCDを売っていると・・・シーンのせいにしていれば一生CD売れないわけで、数字の面ではいろんな要素があるわけで。バンドとかアーティストとして生きていきたいなら、自分たちだけでも崩してやらないと、と思っていて。「今はCD売れないから」と言ってても仕方ないし、ある程度の指標ではあるけど。
大智:まあ・・シーンとかジャンルとかっていうのは多分リスナーが決めることだし、リスナー側から出てくる言葉だと思うんですけども、やってる側からするとあんまりジャンルとかは気にしていないですね。曲を聴いて盛り上がってくれればいいし、今日はこういうバンドと対バンだからこうしなきゃ、ってのもないし。別に意識をしてないのかも。自然にというか。
MV "Seaside Police"撮影現場(滋賀) 写真提供 : Last Arrow
●では質問を変えて、これからのThe Fracturesについて教えてもらえますか?
大智:ま、今はツアー真っ最中ですが、まずはこのアルバムツアーのファイナルを9/24に下北沢GARAGEで終えてから「ツアー行ってよかった!」と、そういうものにして。今のところ手応えは十分ですけど、あんまり先のことを考えてやるってのは、受験勉強とか、来年の冬の為に今から勉強とか、僕は苦手なんで(笑)。今、目の前にあることをやってれば、それが後々繋がると。
のぶ:今、単純にライブやってCD何枚売れた、ってのはやっててワクワクするので、本当に楽しいです。結果ばっか気にしてるわけじゃないですけど。良い結果を出して、二枚目を出したいな、というところで。
●それでは最後になりますが、Art Yard informerの読者にメッセージをお願いできますか?
大智:たぶん、僕らは音楽で表現してるし・・・僕、ライブでもよく言ってますけど、例えばものを書いている人は・・・小説家なんかは文章で表現するし、絵で表現する人もいるし、そういう表現方法は違っても、ものを作るってところでは同じなので、表現している人にはあまり周りに流されずに、自分の良いと思うものだけを作っていてほしいかな、と思っています。僕らも同じです。
のぶ:やりたい事をやって生きる、という時に・・裏にあるものとして、やりたい事で生活を成り立たせる時に、その事にどうシビアになっているか?とか、自分の現状に対してどう思っているだとか・・やりたい事だけを中心にやっていると、そこがフワっとしちゃう時もあるかと思うので、(好きで)やっている事で自分の全てを成り立たせる、というところに真摯に向き合うと、どんどん開けてくるんじゃないかな、と思います。
清水:あとは、ライブを観にきてほしいと思いますね。気に入ればCDを手に入れてほしいと思っています。
●なるほど。みなさん、ありがとうございました。
一同: ありがとうございました!
The Fractures Official http://www.the-fractures.com/ Live Photo : Eiichi Kudo
2,000yen(in tax) LAR-001
1.red out
2.シーサイドポリス
3.Fuwari
4.ノー・コンセントレーション・ノー・
ワンダー・ノー・フューチャー
5.not funny song
6.夏の終わり
7.インマイカー
8.危機
9.Neco
10.殺伐ルーム
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あとがき
Art Yard informerで度々そのライブを体感させてもらったThe Fracturesだが、若く、力強く、そして人懐っこい普通の若者だ。こういったタフで、才能に溢れる若いバンドが、まったく新たな感覚で、様々なアートや映像、音楽と一体となるカルチャーを見てみたいと切に思う。「すぐ隣の天才」は、みなさんのそばにいるような、普通の若者達だ。彼らのステージと中村大智の「声」を体感しに、是非ライブ会場へ足を運ぶとよい。多くの素晴らしいロックバンドと同じように、リスナーは彼らの描き出す音楽の軌跡を見届けたくなるだろう。










