Special Interview : SANTARA

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●Art Yard informerのインタビューへようこそ。まずはお二人それぞれのバイオについて詳しくお伺いしたいと思います。お二人とも出身地はそれぞれ違うようですが、音楽的なバックボーンについてお伺いしたいと思います。どのように音楽の世界に足を踏み入れましたか?

田村キョウコ(以下T):

子供の頃にピアノを習っていましたが、クラシックに深い興味が持てず数年でやめてしまいました。ずっと後に京都の大学のサークルでブルース、カントリー、ブルーグラス、フォークなどを演奏するサークルに入部。それが音楽を始めたきっかけです。私の故郷は山口県岩国市という米軍基地がある街で、ベースのラジオではクラシックなロックが普通にかかっていていました。そういうものを聴いていたことで、ルーツミュージックに対しての違和感がさほどなく、だからちょっと特殊なサークルだったけど、すぐに馴染めたんだと思います。サークルでは”すべてアコースティック楽器で演奏しなければならない”という掟があって、逆に言うとアンプラグドの気楽さの延長線上にステージがありました。いちいちスタジオに入ったり、PAシステムを勉強したり、機材車出したり、しなくていいわけです。ギターが1本あれば完結するわけで。そのハードルが低かったので、特別「音楽の世界に足を踏み入れる」感なく、始まって今に至ります。

砂田和俊 (以下S):

ギターを手に入れたのは中学生の頃です。初めて覚えたコードはEmとA7。メリーアンのサビ。高校生までは学園祭で一時的にバンドを組む程度で。Laugin’NoseとかCOBRAのコピーをやっていて、家に帰るとアルフィーと岡村靖幸を聴いていました。実はその頃、S&G、CSN&Y、ボブディランなどの名前も耳にしていましたが、音源を聴いてもぴんと来ない上に、解説や情報を手に入れる術がなかったんです。大学進学で京都へ行き、アメリカ民謡研究会というサークルに出会い、ここからいわゆるアメリカンルーツミュージックを辿っていきました。京都の街並を背景に。田村キョウコと出会ったのもこのサークルでした。留学、卒業、就職と少しずつ仲間が去り、残った2人でオリジナルをやり始めたのがサンタラです。

●なるほど。ところで、お二人がそれぞれ影響を受けたアーティストがいましたら教えていただけますか?ミュージシャンではなくても構いませんが、音楽的なこと以外にも、表現や活動において、お二人が早い段階で影響を受けた人々についてお聞かせください

T : たくさんの先人達から影響を受けました。挙げきれないですが、でも一番最初に、英語のグルーヴに嫉妬させてくれたのはボブ・ディランだと思います。どうして日本語だと、こんな風にならないのだろうと。日本語はとてもグルーヴし難い言葉です。日本人のミュージシャンで、それに果敢に取り組んだ桑田佳祐氏と岡村靖幸氏がお手本でした。グルーヴというものを無視して日本語の美しさをしみじみ教えてくれたのは、星野哲郎氏、阿久悠氏。映画で昔から好きなのはコーエン兄弟の作品です。ハードボイルドで品があってギリギリの線で大衆性を保っている。文学では内田百閒。言葉の美しさ。絵画では伊藤若冲。妄想と技術が生み出す箱庭感を感じます。
S :サンタラという名前をつけてすぐに出会った加奈崎芳太郎氏には壁を壊してもらったと思います。ボブディランの不機嫌な表情、ビートルズやクラプトンの小心さや端正さ、ニールヤングのこっちを見ないでくれと言っている感じ、レイボーン兄弟やスティーブンスティルスの教養や、ストーンズのバランスだったり日本人の先達の胆力…。映画はカウリスマキ、寅さん好きです。それなりに色んなものに影響を受けたし、今ももちろんその都度。でも結局自分が元々持っていたもの以外はどこにも持って行けていないと思います。

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●ではレコーディングについてお伺いしますが、6月にリリースされる9枚目のアルバム『Cold Heart, Long Distance』は、どのようにして録音されましたか?制作時のエピソードや、録音時に特に大事にしていることなど、現在お二人が作品を制作していく道のりについてお聞かせいただけますか?

T : 『Cold Heart, Long Distance』は、まさにさっきお話ししたコーエン映画のような作品を作りたいと思って、曲作りの段階からコンセプトを持って始めました。コンセプトのあるアルバムは初めてだったので、歌詞の世界をどこまで広げるか狭めるか、悩みましたね。まぁでもどんな風に作っても結局はサンタラ節になるんですけどね。現代のレコーディングというのは、技術の進歩で、誰がどんな風に演奏しても、編集を重ねればそこそこ聴けるものになるんです。ファミレスの味みたいになります。だけどサンタラはファミレスではダメなので、そういう録音、編集の仕方はやりません。野菜を自分で収穫するところからやってる感じです。

S : まず曲が出来て、可能ならば生煮えの状態でライブで何回かやれると良いですね。アレンジが浮かんだら自宅のシステムであれこれ試行錯誤します。特にアレンジの必要なしと判断することもある。固まったらスタジオに持ち込んで生楽器に差し替えをします。上手に録れていたらそのまま使うことも時々はありますね。今回は、今どきのカントリー(アメリカーナ)の音像に寄せたかったので、スタジオのアンビを活かした録音は絶対に必要でした。サンタラにとってはナマ感は常に大事です。今では伝統芸能のようになってしまった古のレコーディング方法だと思います。

●それでは質問を変えて、ステージについてお聞きします。ライブの際にお二人が大切にしていることは何でしょうか?プレイについて、そして演奏以外のことでもSANTARAにとって重要な部分は何でしょうか?また、最近のライブで印象深かった出来事やエピソードがありましたら教えていただけますか?

T : 本能と刷り込みで反射的に出てくることしかやらないということでしょうか。やしきたかじんさんが亡くなって、関西文化圏で大学時代を過ごした私達にとってはひとつ時代が終わった気がしていました。先日の京都のライブで「やっぱ好きやねん」を歌いました。自分で言うのもなんだけど、相当いい感じだったと思います。

S :音数の少ないサンタラのライブはお客さんにも緊張を強いていると思いますが、取り繕わないことですね。それと、ある街でアンコールが終わって一度退場、しばらくしてまた会場に戻るとお客さんは席についたままおとなしく待っていました。テーブルには新譜のCDを一枚ずつ置いて。みんな買ってくれたんだね。これはどういう状況?どうしたの?と思っていたら、マスターがこっちこっち!と呼ぶのです。言われるがままひとつずつのテーブルをCDにサインして廻りました。その時マスターのジーンズのお尻のポケットには「ギャラ」と大書きされた封筒が入っていた。ああ、このサイン巡業が終わったら渡されるんだろうなと思いました。

●結成されたのは99年ということですが、当時はサンタラをはじめ、日本の音楽シーンの黄金期のひとつとも言える時代に、多くのアーティストの個性的な楽曲が楽しめたと思いますが、15年前のシーンと比べて、音楽シーンについて思うことや、お二人が感じてきた変化はどのようなものでしたか?また、現在、新たに注目している物やこれから計画していることなどがありましたら教えていただけますでしょうか?

T : 音楽はいまやマニアのものになりつつあり、逆に何かのオマケ程度のものにもなりつつあると感じます。中間がなくなってきているということですね。それは世間の流れなのでよいことでも悪いことでもない。そういう中でミュージシャンに求められるものは、やはりわかりやすい独自の文化を作って発信し、できることならコミューンのような熱いシンパを作ることでしょう。ライフスタイルや、政治的な発言や、ファッションなどを音楽と絡めて売っていく。マニア向けの音楽はそういう方向へシフトしていってますよね。そういう意味のマルチ性と企画性を求められていると思います。サンタラがやってるかと言われればあんまりやってません。まだもうちょっと、音楽硬派でいたいと思います。

S :音楽業界は残念ながらよい変化はないのですが、ただ、ライブでの会話は今はまだ成立している。ならばますます自由に、ますますDeepになっていくしかないと思います。

●それでは最後に、Art Yardの読者やクリエイターに向けて、メッセージをどうぞ。

T : 音楽を含め、アートで身を立てていくことは昔より難しくなっていると思います。でも努力してはいけないような気がします。こうしたいからこうした、というより、こうしようと思ってないのになっちゃった!なんだこれ?みたいな方が、ことアートに関しては価値があります。究極のローカリズムはグローバリズムです。ぜひあなたの中にしかないものを作って私達を面白がらせてください。

S :好きなことをやれと大人は言うでしょう。もちろんそうなんですが、もはやそれで成り立っている社会の仕組みを無視したまま進める時代ではない。新しい景色を見られるスタンスならば、新しい景色を見に行った方が良いと思います。

2014.6.04 Release『Cold Heart, Long Distance』

01 非情の街
02 Backseat
03 昨日の影
04 500 マイル
05 Eden のテーマ
06 恋に落ちて 07 バリトンギターと科学博物館のために 08 Little Freak

09 恋するディーン

10 バースデイブルース

11 Perfect Happiness

DQC-1284 全 11 曲 ¥3,000 (TAX IN)
Gravy Records/ SPACE SHOWER MUSIC/Sony Music Publishing

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