Interview : Tim Wheeler × Art Yard informer

●Art Yardのインタビューに登場いただきありがとうございます。まず、ソロアルバム『ロスト・ドメイン』の完成おめでとうございます。私が一番最初に驚いたのは、M1『Snow in Nara』で、かなり渋みのあるインスト・ナンバーから始まりますが、これは古くからのあなたのファンにとっても純粋な驚きと刺激になるのではないでしょうか?本作のコンセプトについてお聞かせいただけますか?

やっぱりファンだけじゃなくて自分も驚かせたいというのがこのアルバムを作る時のコンセプトだったんだ。だからこそ色んなことで実験したし、新しいことを色々やってみたっていうところはあるかな。ただ、最初からインストゥルメンタルの曲で始めようと思って作り始めたわけではなくって、プロセスにおいてギターをある日持ったときにこのアイデアが生まれてきて、アルバムのメランコリックなムードというのを最初に見せられるっていうか、すごくパワフルなオープニングになるなと思ったからこの曲を最初に持ってくることにしたんだ。もう一つは、ASHの普通のアルバムの始まり方とはものすごく対照的な始まり方だと思ったからこの曲にしたんだけど、自分の中でここ数年、映画音楽を手掛けてたからインストゥルメンタルの曲を作るっていうことが頭の中にアイデアとしてあったっていうのもこのアルバムを作る上では大きかったと思う。

●私は特にM07『First Sign Of Spring』の削ぎ落としたシンプルさに感銘をうけたのですが、その一方ではストリングスサウンドや、明るいシンセサイザーなどが多く使われていますね?いずれにしても、あなたの声質がとても活き活きとして感じられますが、本作のレコーディング時のエピソードをお聞かせいただけますか?多くの楽器をあなたがプレイしたとお聞きしていますが?

実はあの曲は最初の方に作った曲の一つでライトニング・ホプキンス(1950年代ブルースのアーティスト)の曲を聴いていて、ある日、ハッと思いついたのがあの曲だったりするんだ。ライトニング・ホプキンスはすごく複雑なギターワークとヴォーカルを組み合わせていくような音楽を作る人なんだけど、そこにインスパイアされてパッとアイデアが浮かんで録音した曲なんだ。当時自分の友人のチェリストがニューヨークを訪れていたから彼にストリングスのアレンジを頼んでみたりとか、そういう最もシンプルなセッティングで作った曲の一つだと思うよ。

●では話題を変えて、本作のプロデュースで共に仕事をしたClaudius Mittendorferとその出会いついて、すこし詳しく教えていただけますか?また、彼との作業の中でのエピソードがありましたら教えていただけますか?

最初に出会ったときは『メルトダウン』(ASHの4thアルバム)のミキシングを頼んだリッチ・コスティ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、フー・ファイターズ 他)のアシスタントをやっていたんだ。自分がアトミック・ハートというASHのスタジオを作るときにクラウディウスに手伝ってと頼んでセッティングを手伝ってもらったんだ。その後、ASHの仕事でちょうど彼がロサンゼルスからニューヨークに引っ越そうという時に『一緒にスタジオをシェアしない?』ってもちかけて、シェアをし始めたんだ。だから今は一緒にスタジオをやっているんだけど、そういうふうに昔からの知り合いでどんどんコラボレーターとして重要になっていったっていう人がクラウディウスなんだ。彼自身は8歳のときにドイツからイギリスに移ってきた人だから、こういう言い方をするとステレオタイプな言い方にはなっちゃうんだけど、すごく几帳面なところがあってすごく細かい部分にこだわる人なので、すごく重要なコラボレーターになってきているよ。

●ところで、現在あなたが暮らしている土地で、音楽シーンの流れや、小さなものでも構わないのですが、あなたに刺激を与えてくれる特にエキサイティングなもの、注目している事などががありましたら、日本の音楽ファンのために教えていただけますか?

今、実はASHの新作の作曲をしているんだけど、ザ・ヴァクシーンズのジャスティンが今ニューヨークにいて。彼は住んでるのはロンドンなんだけどニューヨークに長い間滞在していて、彼が自分の作曲の息詰まりを打開するために始めた面白い企画があって。それは色んなソングライターが集まって12時間で12曲を書くっていう企画なんだけど、最後にそれぞれが書いた曲をビールを飲みながら聴きあうみたいな会があるんだけど、それに今参加していてすごく面白いんだ。普段曲を書く時は一人でコツコツと曲を書いているんだけど、それってすごく頭が変になってくるようなプロセスなんだけど、そうじゃなくってソングライティングっていう作業を他のソングライターと共有するっていうのがすごく面白くて刺激になっているんだ。ニューヨークはそういうことをやるにはすごくいい環境で、なんでかというと色んな人が一つのコミュニティに集まってくるようなところもあって。そういうことが最近面白いなと思ってやっていることかな。

●あなたは昔、”You can’t have it all”と歌っていましたが、私はこのアルバムでは、あなたはとても沢山の素敵なものを手に入れているように感じられました。ものを作る上で、多くの経験をしてきたあなたから、若いアーティストや、クリエイターに伝えたいことはありますか?

やっぱり今って音楽業界が難しい状態にもなってきているし、注目を集めるっていうことも難しくなってきていると思うんだけど、一番は自分を信じること、その強さを持つことだと思ってるよ。長い間、音楽みたいなものをやっていこうと思うと、自分たちがそうだったみたいにみんなが興味をもってくる時期もあるし、そうじゃない時期もある。そういう浮き沈みみたいなものはあるんだけど、その中で一番大事なことは自分の音楽を自分のためにやること。自分自身のことを考えてみても、自分が好きで楽しければそれこからすごく興奮し、もし誰も自分の音楽を聴いてくれなかったとしてもやり続けると思うんだよね。やっぱりそれを理由にやっていると自然にオーディエンスって生まれるものだと思うし、あまり別の理由でやらない(自分が音楽を好きで楽しいからやる)ことっていうのは大事だと思うよ。忍耐強く、粘り強くやることっていうのはすごく大事だと思うな。

●最後に、Art Yardの読者と日本のファンへメッセージをお願いします。またソロでも日本へ?

実は10月にソロ・アルバムのツアーをイギリスでやりたいと思ってるんだけど、それを日本でやることが今の夢かな。とにかくオープンな気持ちでこのアルバムを聴いてほしいし、ASHのファンにとっては驚きみたいなものがたくさんあると思うんだけど、それを楽しんでもらえればと思っているよ。

— End

写真提供・協力 : ビッグナッシング

2014.10.29 ON SALE / 日本先行発売

TIM WHEELER “LOST DOMAIN”

ティム・ウィーラー『ロスト・ドメイン』

■発売元: よしもとアール・アンド・シー

■品番: YRCU-98010 ■定価: 2,222円+税 ■その他: 解説 / 歌詞 / 対訳付

■日本先行発売 ■日本盤ボーナス・トラック4曲収録

 ASHのティム・ウィーラーのファースト・ソロ・アルバムが完成。数年前に実父を亡くしたことがきっかけとなってつくられたアルバムで、ドラム以外の楽器をほぼ自身でプレイ。ストリングス / ブラスを大胆に使用しASHとは違った壮大な世界観表現したドラマティックな作品。

 

 

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