Special Interview : WASHED OUT

● Art Yardにご登場いただきありがとうございます。まずはあなたのバイオについて、改めて掘り下げて教えていただきたいのですが、ウォッシュト・アウトとしての活動以前も含め、どのようにしてこの音楽の世界に足を踏み入れたのか、日本のリスナーのために少し遡って詳しくお聞かせいただけますか?

最初に音楽を始めたのは子どもの頃で、たぶん5歳くらいだったと思う。ピアノを習ったんだ。クラシックのピアノのレッスンを受けた。それが3、4年くらい続いたかな? 子どもの頃にそうしたのは、音楽を学ぶ上ですごくいい基盤になったと思う。でも大きくなるにつれ、キッズが聴くような音楽を聴きはじめたんだよね。ロックとかラジオで流れるような音楽とか。クラシック音楽はその年ごろの子どもには面白くなくて。で、ピアノをやめて、ちょうど同じ頃にギターを弾きだした。ギターの弾き方を覚えはじめて、90年代だったから当時のグランジなんかを聴くようになった。それが大学に入るくらいまで続いたんだけど、18くらいで初めて自分のPCを買って、曲を書きはじめたんだ。コンピュータのソフトウェアで曲を作りはじめたんだよ。そこがたぶん、今僕がやってることに一番直接的な影響を与えてると思う。それ以前みたいにギターで音楽をやってたら、他の人たちにプレイしてもらわなきゃいけないんだよね。曲を作るのにも、ライブで演奏するのにも。

コンピュータで音楽をやるようになって一番素晴らしかったのは、なんでも自分一人でやれるってこと。一人でマルチトラックの曲が作れたんだ。僕にとってはそこがかなり大きかった。うん、それが今僕がやってることに繋がってるって言えるね。今でも基本的には一人でコンピュータで作業してるし、ドラムやベース、時々はギターみたいな楽器のパートを自分で書いてる。ただ、そこが新作で一つ違うところなんだけど、今回はそういうやりかたを変えようと思ったんだ。前に進んで、進化するために。これまでになくコンピュータに頼らず楽器を演奏したし、その意味では音楽的にかなり変わったと思う。たぶん、これまでもこれからもずっとそうなんじゃないかな。僕は同じようなアルバムを繰り返し作りたくないし、つねに新しいテクニック、新しいやりかたで実験したいと思ってるからね。

●前作『Within & Without』から引き続きベン・アレンがプロデューサーとのことですが、彼との仕事でのエピソードがありましたら教えていただけますか?今回も互いに仕事をしていく上で、前作の時と異なるアイデアや、作品において新たな影響や発見をした点などはありましたか?

ベンが優れてるのは、若いアーティストに昔ながらの技術、よりオールドスクールなテクニックを試させるところなんだ。彼はオールドスクールな録音技術に熟達していて、マイクの位置やサウンド・エンジニアリングに通じてる。あと彼自身ミュージシャンとして才能があるから、僕がすごく曖昧で抽象的なことを思い付いても、それをちゃんと解釈してくれるんだよ(笑)。僕の両方のアルバムで楽器もいろいろ演奏してて、実際僕よりミュージシャンとして技術的なところではずっと才能がある。だから僕がある楽器のパートを思い付くと、自分で弾く前に彼がぱっとやってくれることも多いんだ。僕がやったら30分はかかるところを、彼なら2分でできる。その意味でも彼と組むのはすごくうまくいくんだよ。

●なるほど。ところで今作ではかなり多くの楽器を用意したと聞いていますが、もともと所有しているものも多かったのでしょうか?また、ビンテージなキーボードならではのサウンドで、あなたが最も気に入っているものがありましたら、詳しく教えていただけますか?また、今作において、テクノロジーを使った音も含め、曲作りやトラックそのものに大きな影響を与えたものなどはありますか?

ハープやヴィブラフォン。おかしいのは、僕には元々キーボードを弾くバックグラウンドがあって。あとはさっきも言ったギターだね。でもハープやヴィブラフォンの演奏を学んだことはない。まあラッキーなことに、今のテクノロジーではいろいろ面白いソフトウェアがあって、そういうハープやヴィブラフォンの音を全部録音して、サンプリングしてくれてるんだ。そのプログラムを使えば、弾き方を知らなくてもそういうサウンドを全部使える。今回の演奏はほとんどがそういうソフトウェアを使ってるんだよ。録音されたサウンドを使って、僕がキーボードを弾いてるんだ。

●では、公開されている”イット・オール・フィールズ・ライト” のビデオについて、詳しく教えていただけますか?あのドリーミーなビデオはどのようないきさつで制作されたのでしょうか?

僕にとってあの曲ってちょっと気まぐれな、予想できないような感触があって、アニメーションを使うのがしっくりきたんだ。アルバムのアートワークはNYのアーティストの作品をベースにしてるんだけど、彼女は昔の百科事典のボタニカル・アートを見つけて、それを使うんだよ。挿し絵や写真を切り取ってコラージュにするんだ。ビデオではアニメーターがそれを全部取り込んで、アニメを制作した。すごくグレイトだと思う。僕がアルバム制作中思い描いてたものが形になってて、ほんと気に入ってるんだ。

●では質問を変えて、あなたはChill Waveという新たなジャンルの旗手として一躍注目されましたが、そういったジャンルの名称は別として、あなたにとってご自身の音楽作品や表現をする上で、最も重視している部分は何でしょうか?サウンドについて、そしてあなたの活動そのものについて、それぞれ愛情を注いでいる事柄についてお答えいただけますか?

そうだな……活動を数年続けてきて、一番大きいのはライブにおいてもレコーディングにおいても、経験を積んだことなんだよね。でもいろんなことを学んだ今、レコーディング面では、自分が持ってたイノセンスがすごく恋しくなるんだ。何も知らずにやってたことがすごく貴重に思える。ルールを知らないのが、アートを制作するうえですごくクールなやりかただったと思うんだよ。ルールを知らないと、何が正しくて何が間違ってるかわからないまま、手探りでやるうちにものすごく面白いものにぶつかる。だから今はむしろ自分をだまして、そういう考え方に導くようにしたりするんだ。技術的な側面ではどうするのが正しくて、どうするのが間違ってるか、もうわかってるから。でも逆に、ライブでのパフォーマンスでは経験がものをいうんだよね(笑)。エレクトロニックな音楽をライブでやるのってすごく大変なんだ。自分でも最初はひどかったと思う(笑)。それを思うと、今回の新しいツアーはすごく楽しみなんだよ。時間をかけて、スペシャルなものにしたいと思ってる。

●なるほど。ところで、次にあなたが計画していることや、楽しみにしていることなどはありますか?というか、秘密に計画していることがあれば、少しだけリークしてくれますか?話すと秘密ではなくなるかも知れませんが…

やっぱりツアーに出ることだよね。もちろんライブをやるのも楽しみなんだけど……こう言うとびっくりする人もいると思うんだけど、ツアー中のほうが時間があって、忙しくないんだ。特に今みたいな時期に比べると。今はビデオも作らなきゃいけないし、バンドのリハーサルが来週始まるし、プリプロダクションでやらなきゃいけないことがたくさんある。あと、クリエイターズ・プロジェクトでドキュメンタリーを撮り終えたばっかりなんだ。今はカナダに向かってる最中なんだけど、カナダで何日か過ごして、また戻らなきゃいけない。だからツアーに出て、ヴァンで一人で過ごせる時間が何より楽しみなんだ(笑)

●インタビューにお答えいただき、ありがとうございました。それでは最後になりますが、新作のリリースを前に、Art Yardの読者と、日本のリスナーへ向けてメッセージをお願いできますか?

新作アルバムを楽しんでほしいし、また日本でライブをやりたいと思ってる。また日本の庭園にも行きたいしね。僕、日本の文化を体験するのはツアーの中でもほんとに楽しみにしてるんだ。

PHOTO : Shae DeTar
特集協力 : ビッグ・ナッシング/よしもとアール・アンド・シー 


【WASHED OUT “PARACOSM”】

2013.8.7 ON SALE【日本先行発売】

ウォッシュト・アウト『パラコズム』

■YRCU-98008■2,300円(税込)/2,190円(税抜)■解説/歌詞/対訳付

★日本先行発売(UK/EU:8月12日、US:8月13日)

★日本盤ボーナス・トラック収録

[収録曲目]

1. Entrance / エントランス

2. It All Feels Right / イット・オール・フィールズ・ライト

3. Don’t Give Up / ドント・ギヴ・アップ

4. Weightless / ウェイトレス

5. All I Know / オール・アイ・ノウ

6. Great Escape / グレイト・エスケイプ

7. Paracosm / パラコズム

8. Falling Back / フォーリング・バック

9. All Over Now / オール・オーヴァー・ナウ

10. Pull You Down / プル・ユー・ダウン*

*ボーナス・トラック

 

【ウォッシュト・アウト/バイオグラフィー】

米・ジョージア州出身のアーネスト・グリーンによるプロジェクト、ウォッシュト・アウト。2009年、デビューEP『ライフ・オブ・レジャー』をリリース。チルウェイヴのパイオニアとして注目を浴びる。2011年5月には「FREAKS MUSIC FESTIVAL ’11」にアルバム・デビュー前ながら出演。日本でのライヴ・デビューを果たす。7月にはファースト・アルバム『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』をリリース。インディながら全米チャートで26位のヒットを記録し、その直後「フジロック・フェスティバル ’11」で再来日。2012年1月にはジャパン・ツアーもおこなった。

■ジャパン・オフィシャル・サイト:http://bignothing.net/washedout.html

 

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